#3線香同士の成分比較と官能評価
通販サイトで線香を見てみる
コロナ禍になり、ネットで製品を購入することが多くなりましたね。新しく線香を購入しようと、技術者Oは
通販サイトに訪問していました。
キーワードは『白檀 線香』で検索をかけると、いっぱい出てきますね(図1)。

けっこう値段に差がありますね。どれも白檀と表記されているのにいったい何が違うのでしょう。そうこうしているうちに、頭の中でツブヤキ始めました。
~フワフワ~
「他の線香にもサンタロールは含まれてるんかな」
「もしかするとサンタロールの配合量が違うかもしれへんな」

考え込んでも解決しないので、今回は比較的高価な線香(線香A)と安価な線香(線香a)を使って香りや成分比較を行っていくことにしました。
線香Aと線香aの官能評価
それぞれの線香を嗅いでみました。

うん、違う。
何かが違うのだ。
この違いをどのように表現すればよいのか難しいが、香りを言語化して、比べてみました(図2)

図2)線香Aと線香aの官能評価(技術者Oによる個人的評価)
ウッディ:木の香り
オリエンタル:東南アジア系の
ミステリアスな香り
ミルキー:牛乳みたいなマイルドな香り
スイート:甘い香り
スパイシー:ツーンorピリっとする香り
違いは、線香aの方は鼻の奥にくるような刺激性があり、ミルキーなマイルド感はほとんど感じませんでした。
この線香aにはいったいどのような香り分子が含まれているのでしょうか。楽しみですね♪ワクワク
では早速GCMSで分析することにしましょう!
各線香の香り分子分析

図3-1)線香Aと線香aのGCMSクロマトグラム
GCMSの結果から、
α-サンタロールに相当する位置(図3-1 赤口)にピークがあるのかを確認してみましたが、線香aには存在しておりませんでした。
線香aのクロマトグラムにおいて、比較的強く検出された4つのピーク(図3-1#a~d)を解析すると興味深い構造をもつ物質が浮かび上がりました。
この内、最もピーク強度が強かった成分はセドロールでした(図3-2#c)。
香りや機能性については分子構造と相関性があると言われていますので、セドロールとα-サンタロールの構造的特徴を探りながら、それらを調査をしていきたいと思います。
(#aは前回、ご紹介したσ-カジネンと類似するので、詳細は割愛します)

セドロールとα-サンタロールの分子構造

図4-1)セドロールの分子構造(左)、α-サンタロールの分子構造(右)
前回と同様、疎水性部と親水性部にわけてみました(図4-1)。
親水性部は同じですが、疎水性部はどうでしょう。
環状炭化水素ではありますが、複数の環が組み合わさっていることがわかりますでしょうか?
見やすく色分けして、一つ一つの環を数えてみましょう(図4-2)。

図4-2)セドロールの分子構造(左)、α-サンタロールの分子構造(右)
数えると、どちらの成分にも3つの環が有ることがわかります。
興味深い点は環の数にもこだわって、白檀の香りに似せようと製品設計していることです。
この分子の香りについて、ますます気になってきますね。
しかし、残念なことにそれら分子単体は手元にありませんでした、、、
代わりにその成分を生産する樹木を用いて、白檀の香りと比較することにします。
ヒノキと白檀の官能評価

図5-1)ヒノキ(左)、白檀(右)
調査の結果、セドロールを生産する樹木は檜(ヒノキ)でした(図5-1)。
それと白檀の香りを比較すると、以下のようになりました(図5-2)。

図5-2)ヒノキと白檀の官能評価(技術者Oによる個人的評価)
ウッディ:木の香り
オリエンタル:東南アジア系の
ミステリアスな香り
ミルキー:牛乳みたいなマイルドな香り
スイート:甘い香り
スパイシー:ツーンorピリっとする香り
ヒノキはオリエンタルな香りやスイートな香りがほとんど感じられず、香辛料をイメージするようなスパイシーな香りが印象的でした。
おそらく線香aで感じたオリエンタルでスイートな香りは、セドロール以外に検出された香り分子による影響かもしれません。これらについてはまた次回ご紹介していきますので、楽しみにしていて下さい!
ここからは余談ですが、セドロールとサンタロールの効果面に関して、文献から情報が得られたので併せてご紹介していきます。
セドロールとサンタロールの効果
それぞれの成分を使った人体に対する効果を文献からまとめました(図6)。

図6)セドロールとサンタロールの効果比較
(〇:効果アリ ×:効果なし)
※1:鎮静効果:心身を落ち着かせる効果
※2:嗅覚系ではなく、循環系に対して効果的
調査の結果、共通した効果を持つことが報告されていましたので、構造と機能性について、関連していることがわかります。
これらの成分を含む製品を活用すれば、花見の際に昆虫類の侵入を防ぎ、リラックスした状態で団欒できることが期待できます。

参考文献)
・JP3044480B2(昇華性防虫剤)
・JP3848412B2 (アリ類の忌避剤)Bulletin of research center for clinical psychology of Hiroshima
international university,2006,vol,5,1-1
・(香気成分セドロールを用いた睡眠改善技術のQOL向上への可能性)
・Nihon Shinkei Seishin Yakurigaku Zasshi. 2007 Aug;27(4):167-71.(睡眠障害ラットの睡眠覚醒サイクルに
対するサンタロールの効果)
・ Planta Med 2004 Jan;70(1):3-7. doi: 10.1055/s-2004-815446 (経皮吸収後の東インド白檀油と
α-サンタロールの人への影響の評価)