#8 分析技術者ブログ Returns ~リチウムイオン電池の耐火材の分析について~

はじめに

まずは世間話からー

 

ブログの記載を担当することになり、話題を考えていたところ、ちょうど応援している阪神タイガースが日本シリーズを制し、38年ぶりの日本一となりました。監督のコメントにもありましたが、前回1985年の日本一から38年。「長かったなあ」という正直な思いも持ちつつ、自分の身の周りのことを振り返ってみたりもしていました。

 

私のことはさておき、1985年は、化学の世界で、大きなブレークスルーがあったようです。後にノーベル化学賞の対象となるリチウムイオン電池も、現在の構成のプロトタイプが作り出されたのは1985年であると聞いたことがあります。

 

そのリチウムイオン電池も、 38年の月日を経て、更なる改良が施された結果、社会の至るところで活躍する素材となっています。

自動車への搭載についても日々、研究開発が進んでいることは、皆様ご存知の通りですが、自動車への搭載で、懸念されるのは、やはり電池の安全性ではないでしょうか。

 

今回のブログでは、電池の安全性を確保する、火災を防止する材料とその分析について取り上げてみたいと思います。

 

電池の防火の方法論

電池の防火対策は大きく2つに分類できると考えられます。

「火が出たら消そう」、「火が出ないようにしよう」という2通りのコンセプトです。

電池火災の防止に使用される材料

① 発火後に延焼防止、消火 ⇐「火が出たら消そう」
消火機能を有するフィルム
耐火コーティング剤
耐火耐熱シート  (マイカ―シートなど)

② 電池自体を不燃化 ⇐ 「火が出ないようにしよう」

全固体電池
水系電解液の使用(水系リチウムイオン電池)

今回は、①の”マイカシート”に着目して、ラマン分析、GC-MS分析の事例を紹介します。

マイカシートのラマンスペクトル

マイカは、簡単に説明すると天然の鉱物です(日本語だと雲母とも呼びます)。

組成式は、KAl2AlSi3O10(OH)2で、たくさんの層が集まった形で採掘されます。

鉱物のマイカ(青色)とシート化されたマイカ(緑色)のラマンスペクトルを測定・比較してみると、鉱物試料では見られないピーク(A、B、C)が出現しました。

これらはメチル基(-CH3)を有するシリコーン化合物に特徴的なピークです。

このシリコーンがどのような構造かを確認するため、GC-MSの分析も行ってみました。

マイカシートのGC-MS分析

GC-MS検出化合物

直鎖状の炭化水素化合物や、可塑剤と考えられるジブチルフタレートも検出されていますが、

籠状骨格のシリコーン化合物も検出されました。

(このような籠状のシリコーンは「ポリシルセスキオキサン」と呼ばれています。)

このマイカシートは、天然マイカを細かくしたものに、シリコーンを混ぜ、シート状に成型されたことが推測されます。

まとめ

今回は、電池の防火材に使用されるマイカのシートの分析事例を紹介しました。

ラマンスペクトル解析やGC-MS分析により、どのようにシートが製造されているかを分析・推定することができます。

 

ここまでの話を締めくくるカッコイイ結論は思い浮かばなかったのですが、

あくまで技術者ブログということもあり、 「ま、いいか」と自分に言い聞かせ、

ここで話を終えること、ご容赦ください。

 

次回、筆者がブログを担当する機会がいつになるかは未定ですが、次に順番が回ってきたときのネタは、「そら、アレよ」として、筆を置くことにします。

(筆は持たず、キーボードを打っていますが…)

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