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週間分析馬鹿(re) Vol.004
分析一筋十三年。分析ヲタクがお送りする、業務中の分析あるあるや面白い装置の紹介等
描くコーナーです。気軽にしかし、妙なところで役に立つ内容をお送りします。
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熱分解装置 ~パイロホイルのいいところ~
こんにちは、分析ヲタクです。
前回ご紹介しましたGC/MSの熱分解用に使用している熱分解装置について、さらに深く、より深く、
マニアックな部分を紹介したいと思います。前回のおさらいで外観はこんな感じの装置です。
日本分析工業社製 JCI-55
ポータブルタイプのキューリーポイントインジェクター
巷の熱分解装置の割合を聞いてみると、加熱炉式の方がメジャーのようです。
なんで加熱炉式にしたかの理由を聞いてみると、
「多段階(ダブルショット以上)で熱分解できるからこっちにした」
「EGA(発生ガス分析Evolved Gas Analysis)もやりたかったから」
応用的な使い方をすることが多い場合には加熱炉式の人気が高いようです。
一方でキュリーポイント式にする人は、簡単・手軽に熱分解GC/MSやりたい人が
選ぶようです。
ん?このままだとキュリーポイント式を使っている分析ヲタクはめんどくさがり屋さんだと
思われてしまうので、マニア向けにキュリーポイントのいいところをご紹介します。
まず、最初にキュリーポイント式のサンプルセットまでの流れを図付きで説明します。
これがパイロホイルです。
2×4cmぐらいの厚いアルミホイルみたいな感じです。設定温度によって合金の割合が違います。
このパイロホイルを装置付属のホッチキスみたいな治具で成形します。こんな感じになります
真ん中にちょっとくぼみがあります。ここにサンプルを乗せます。
これをピンセットとラジオペンチのような工具で折り紙をすれば、サンプル出来上がりです。
あとはこれを石英管の中にいれてスイッチOnにすれば0.2秒で設定温度まで到達し、サンプルに熱が
かかります。うーん、便利な仕組みです。
キュリーポイント式の隠れた良いところとして「反応熱分解GC/MSがやりやすい」です。
反応熱分解GC/MSをやったことのある人ならば、経験されたと思いますが
「微小なサンプルと微量な反応液がしっかり接して反応してくれたのか?」
という不安が常にあります。
パイロホイル式だと成形後のくぼんだ部分にサンプルを置き、マイクロシリンジで微量な反応液が
混ざるところが目視で確認できます。目視で確認ができる!すばらしいことです。
さらにパイロホイルを折り紙する際に、混合された試料とホイルをしっかり密着させることができるので
反応率も良い印象を受けました(それでも反応率100%にはならないので悪しからず)。
一方、加熱炉式のカップだとサンプルと反応液の接っし具合が暗くてよく見えないので
分析してみたら反応率が悪かったりします。
たくさん試料を入れて、たくさん反応液を入れれば間違いないのですが、装置が著しく汚染されて
その後が大変です。
ここがパイロホイルを使うキュリーポイント式の良いところです。
でもたまにEGA測定をしたいときがあるので
「加熱炉式もほしいなぁー」と思う今日この頃です。
以上、分析ヲタクでした。また来週~。