共重合樹脂には多くの種類がありますが、中でもABSはその特異な分子構造により多くの製品に使用されています。エンジニアリングプラスチックとして、電子製品、自動車、電化製品、IT関連製品など幅広い分野で活用されているABS樹脂を、FT-IR分析を使い特徴的なIRスペクトルを考察しました。
ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)について
ABSは、アクリロニトリル ブタジエン スチレンの共重合体でそれぞれのモノマーの頭文字を並べた命名です。
アクリロニトリルの密着性、ブタジエンの耐衝撃性、スチレンの成形性を兼ね備えた優れた樹脂です。


分析サンプル
IRスペクトル
ABS構成各ユニットの分子構造由来のピークが見受けられる。

- 3027:フェニル基対象伸縮(スチレン由来)
- 2237:ーCN伸縮(アクリロニトリル由来)
- 1494:フェニル基CC伸縮(スチレン由来)
- 966:C=CH面外変角(ブタジエン由来)
- 761/701:1置換フェニル基CH面外変角(スチレン由来)

データの読み、解釈
分析サンプルは、標準的なABSでIRスペクトルもオーソドックスな形状をしています。
重合プロセス条件や、二次加工、および使用環境によりスペクトルの形状と帰属ピーク位置は変わります。
ピークのシフトは、分子間力や変質による近傍に結合する元素の種類の変化などが影響します。
また、重合時の各モノマーの反応の向き(head/tail)順序により、共役構造を有する場合は、フェニル基のピークがシフトします。

Head to tail

Head to head

tail to tail
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