全固体電池用原料の組成分析

五硫化二リンは、硫化物系全固体電池の電解質製造に使用される原料の一つです。イオンクロマトグラフィーを用いて、五硫化二リンの純度を分析した例を紹介します。

硫化物系全固体電池の電解質

硫化物系全固体電池の電解質として、一般に、Li3PS4、Li6PS5Cl、Li6PS5Br、Li7P3S11などの化合物が使用されます。これらの化合物を製造する際に、リン、硫黄源として、五硫化二リン(P4S10)が原料として使用されます。

 

電解質の純度が電池の性能に大きく影響するため、その原料であるP4S10の純度の管理も、電解質の製造工程において重要となります。イオンクロマトグラフィー(以下、ICと略)によって、五硫化二リンの純度分析を試みました。

五硫化二リンの分析手順

P4S10は水との反応により、リン酸と硫化水素を生成します。硫化水素は一部、蒸気として揮発する上、スルフィドイオン(S2-)の形態をICで検出することは困難です。そのため、硫黄成分の揮発性を抑え、且つICで検知できる形態に変換する必要があります。

 

IC測定の前処理として、P4S10の粉末をアルカリ水に溶解させ、リン酸塩(PO43-)とスルフィド塩(S2-)に変換しました。その後、S2-イオンを硫酸イオン(SO42-)に酸化して、IC測定溶液を調製しました。

IC測定結果

P4S10は市販の試薬を分析に供しました。

P4S10にNaOH水、過酸化水素水を順次添加し、得られた溶液を希釈、フィルター処理し、IC装置に注入しました。硫黄、リンの含量を定量した結果を表1に示します。

 

硫黄、リンの合計が100%に満たず、吸湿による劣化や、合成反応、精製時の工程で硫黄、リン以外の元素が混入した可能性が考えられます。

五硫化二リン以外にも、図1に示した電解質の組成も、ICで分析することが可能です。

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