液晶パネルに使用される偏光板はトリアセチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレートなどを貼り合わせた多層フィルムで出来ています。ここではHS-GCMS分析、熱脱着GCMS分析による偏光板の劣化解析例を紹介します。
信頼性試験
セグメント方式LCDパネルが使用されている時計を用いて信頼性試験を実施しました。
試験後の点灯確認では、Cのパネルに偏光板の赤変が見られたものの、駆動に問題はありませんでした。
A
初期品
B
65℃ x 85% x 1000時間
C
80℃ x ドライ x 1000時間
HS-GCMS分析によるアウトガス分析
信頼性試験後のLCDパネルから偏光板を切り取り、HS-GCMS分析を行いました。HS-GCMS分析では、試料から発生するアウトガスを分析する事が出来ます。
分析の結果、Bの偏光板から酢酸のピークが検出されました。
Bは長時間の温度・湿度負荷により、偏光板に使用されている酢酸セルロースが加水分解し、酢酸が発生していると考えられます。
酢酸セルロースの加水分解
熱脱着GCMS分析による低沸点成分分析
また、熱脱着GCMS分析にて試料に含まれる低沸点成分の分析を行いました。
分析の結果、Bの偏光板からAやCとは異なるPET分解物由来のピークが検出されました。
ポリエチレンテレフタレート(PET)
分析の結果、Bの偏光板に使用されている酢酸セルロースやPETが劣化していることが分かりました。
また、Cの偏光板ではなくBの偏光板にて劣化によるアウトガスやポリマー分解物が検出された為、湿度負荷がポリマーの劣化に大きく影響していると考えられます。
このようにアウトガスやポリマー分解成分に着目して、目に見えない劣化を検出する事が出来ます。