EBSDは結晶方位の測定を得意としています。結晶方位以外にも結晶構造の違いを識別できる場合があります。今回はEBSDの事例として、似たような元素組成をもつ2種類の黄銅材について比較を行いました。結晶構造の違いをもとに、2つの試料の差異を可視化します。
元素分析による2つの黄銅材の比較
2種類の黄銅材についてSEM-EDXによる分析を行いました。スペクトル分析を行ったところ、黄銅は主としてCu(銅)とZn(亜鉛)から成り、両試料の元素組成は比較的似通っているように見えます。また、元素Cuと元素Znについて面分析を行いましたが、面内分布に偏りは見られませんでした。
試料1(スペクトル分析と半定量値)

試料1(面分析)

試料2(スペクトル分析と半定量値)

試料2(面分析)

EBSDによる2つの黄銅材の比較
EBSD分析を行い 相マップ を確認したところ、試料1の一部に結晶構造の異なる β相 が見られました。試料1には β相 が含まれることから、両試料に材料物性の差があることが予想されます。
試料1(EBSD 相マップ)

試料2(EBSD 相マップ)


α相とβ相の比率 [%]

黄銅の α相 と β相 は、FCC 構造とCsCl 型構造なので、相マップで区別ができます。
※EBSDとSEM-EDXは同試料の異なる位置で分析しています。