ラミネートフィルムは透明性の高い材料を用いることで、印刷物の視認性を保持しつつ、その表示面を保護する目的で様々な業界で使用される。加工の際は、熱圧着を行うので、分子の状態は加工前に比べて変化していることが想定される。今回は、ラミネートフィルムに対して、熱を加えた条件と加えていない条件を比較して、製品に残留する応力を複屈折から明らかにすることを試みた。例として、ポリエチレンテレフタレート(PET)とエチレン酢酸ビニル(EVA)で構成されたラミネートフィルムを用いた測定結果を紹介する。
DSCによるガラス転移点測定
DSC測定は、試料の物性値(ガラス転移点、融点など)が把握できる熱分析手法の一種である。
測定結果の各点線はガラス転移点(Tg)を示しており、この値は成形品の残留応力を緩和するためのアニール温度の基準値となる。この結果からEVAのTg以上かつPETのTg以下の60℃をアニール温度に設定した。
WPAによる複屈折測定
位相差(nm) サンプル膜厚:PET層(約50um)、EVA層(約35um)
熱処理を加えることで、PETの位相差が500nm以上の減少を確認した。Tg以下でもPETの残留応力は緩和(応力緩和)していることがわかる。
熱処理を加えることで、PET+EVAの位相差が200nm以上の減少を確認した。PETの応力緩和はTg以下で生じていたので、Tg以上で処理したEVAにも応力緩和が起こっていると推定される。
PETとEVAを複合させることによる効果
PETは正の複屈折、EVAは負の複屈折の特徴を持つ。これらを複合体とすることで、 EVAはラミネートフィルムの低複屈折化に少なからず寄与し、印刷物の視認性を保持していると推定される。