一般的なプリント基板(PCB基板)のAuめっき表面を分析した際、下層のNiが露出していないにも関わらず検出される場合があります。これは電子線の散乱深さに関連性があり、正しい分析結果を得るには適切な加速条件を設定する必要があります。今回、モンテカルロシミュレーションを用いて加速電圧の違いによるEDX検出深さについて確認を行いました。
テスト基板概要
試料は一般的なプリント基板(PCB基板)のAuめっきパッドを用いました。層構成はCu配線上にNiめっき/Auめっきが施されたものです。Auめっきの厚みは断面観察より、212nmです。
テスト基板外観
Auめっき厚み確認
加速電圧の違いによるEDX検出感度
EDX分析結果
加速10kVではAuめっき下層のNiは検出されていませんが、加速電圧12kV以上だと下層のNiが検出されています。
加速電圧を上げるとなぜ、下層の情報を検出するのか、モンテカルロシミュレーションにて確認しました。
モンテカルロシミュレーションによる電子線散乱領域確認
加速電圧10kv
散乱深さは190nmと算出
加速電圧12kv
散乱深さは260nmと算出
加速電圧15kv
散乱深さは380nmと算出
シミュレーション結果
加速10kVでは入射電子の散乱深さ190nmと算出されました。212nmのAu層より深くは電子が散乱していないため、下層のNiが検出されなかったことが分かります。
一方、12kVで260nm、15kVでは380nnと実際のAuめっき厚より深い位置まで電子が入り込み散乱しているのが分かります。このため、下層のNiから特性X線が発生し検出されたものと考えられます。
(今回はほんの一例に過ぎませんが、正しい分析結果を得るには電子がどのように散乱しているか想像しながら加速電圧を設定することが大切です。)