物質が温度変化にともない相変態を起こすとき、熱エネルギー変化が起こります。
この熱エネルギー変化はDSCを用いると捉える事が出来ます。
形状記憶合金は変形させても固有の温度以上にすると元の形状に戻るという特性を持つ合金であり、形状記憶性の発現は、相変態(マルテンサイト変態)によるものです。
変態時の熱エネルギー変化をDSCにて捉える事で、3種類の形状記憶合金製品の変態温度を測定し、元素分析によって組成との関係を調べました。

変形した針金をお湯に漬けると
一瞬で元の形状に戻ります。
DSCによる変態温度測定
DSCにて3種類の形状記憶合金の変態温度を調べました。変態温度はA>B>>Cの順であることが分かりました。形状記憶合金Cは室温では超弾性*の状態であると考えられます。


Af :形状回復温度
Ms:マルテンサイト変態開始温度
*超弾性
形状記憶合金を形状回復温度より高い
温度にて使用する時、外力によって
変形を受けても外力を取り除くと
直ぐに元に戻る性質
元素分析による組成解析
元素分析を行うと、変態温度が氷点下であった形状記憶合金Cでは、A,Bに比べTi/Niの比が異なる事が分かりました。一方、形状記憶合金AとBではTi/Ni比に大きな差異は見られませんでした。
ニッケルチタン系形状記憶合金では、Ti/Ni比が変態温度に影響を及ぼす事が知られており、Ni量が多くなると変態温度は下がるとされています。
AとBの変態温度の差は、製造時の処理の差により結晶状態に差が出ている可能性が考えられます。

DSCは形状記憶合金の様に、相変態に伴う熱エネルギーの出入りを捉える事が可能です。
材料を加熱、冷却した際に発生する熱を知る分析手法としてDSC分析を活用ください。