トップ・メッセージ 2021年 年頭のご挨拶

昨年は、新型コロナウィルスにビジネスも日常生活も翻弄され、感染対策とビジネスの両立に腐心を繰り返した一年となりましたが、皆様のおかげで新しい年を迎えることができました。まずは感謝申し上げます。

現在も、新型コロナウィルスの感染に苦しんでおられる方々には、心よりお見舞い申し上げます。また、年末年始含め、休日返上で文字通り命を懸けて感染者の治療に当たっていらっしゃる医療従事者の方々には感謝してもしきれない気持ちでいっぱいです。

これからもコロナとの闘いは続きますが、コロナに打ち勝つために当社は今年、何をどう取り組んでいこうとしているかについて、以下に申し上げたいと思います。

昨年、年の瀬も迫る12月25日から26日にかけて、”政府が脱炭素、グリーン成長戦略を発表した”との記事が多くの新聞、テレビなどで取り上げられました。
これは菅総理が10月の所信表明演説で「我が国は、2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、カーボンニュートラルを目指す」と宣言したことを受けてのものですが、”グリーン成長戦略”という言葉自体は、少なくとも8年以上前の2012年、当時の内閣の進める国家戦略の一つ、エネルギー・環境会議の議事録の中に既に出て来ています。ただ、2015年の国連サミットで採択されたSDGsや昨今よく耳にする、全世界3,000兆円ともいわれる“ESG投資”といった世界的な脱炭素の勢いに押される形で出遅れ気味の日本の首相自ら所信表明演説で発した2050年カーボンニュートラル宣言、これで期限を切られた格好です。その実現に向けての具体策と工程表を政府が、12月25日、60ページにわたる資料にまとめて発表したことを受けての一連の報道でした。

その資料の冒頭の文章の中で「グリーン成長戦略を支えるのは、強靱なデジタルインフラであり、グリーンとデジタルは、車の両輪である。」という文言を盛りこんでおり、ここでは、脱炭素と合わせて政府の推進する経済を活性化させるもうひとつの成長エンジン、DX(デジタルトランスフォーメーション)の必要性も強調し訴えています。これら国を挙げて推進しようとしている2つの潮流、脱炭素とDXはこれから数十年続く大きな流れであることは間違いないでしょう。

ところで当社の推進する4つの事業

① 自動車関連分野を主要ターゲットとした電子部品や材料に関する受託分析・解析・試験サービス

② 再生可能エネルギーの中でも主要位置を占める太陽光発電に関して、太陽光パネルの不良を特定する検査装置の開発・販売

③ 製造現場のIoT化、活性化を側面から支援するメーカー保守対象外の電子機器全般の保守・修理サービス

④ 半導体ウェハの成膜・加工、及び、MEMSファウンドリーサービス

いずれにおいても、国がまとめたこの”グリーン戦略”プランに深く関係しています。”グリーン戦略”プランには、14の重点分野が明記されており、その中に次の3つの産業分野が含まれています。

  • 半導体・情報通信産業
  • 住宅・建築物産業/次世代型太陽光産業
  • 資源循環関連産業

”半導体・情報通信産業”においては「超高効率の次世代パワー半導体(GaN、SiC、Ga2O3など)の実用化に向けて、研究開発を支援する」とし、次世代化合物パワー半導体の普及に力を入れることが強調されています。当社の受託分析・解析・試験サービスを行っている事業部ではパワー半導体の評価・解析に特に力を入れており、四半世紀以上前から取組みを開始し、またGaN、SiC、Ga2O3といった化合物系の次世代パワー半導体の解析にも、10年以上前から取り組んでいます。これらの半導体は急速に進む自動車のEV化には欠かせない部品となっており、パワー半導体メーカーのみならず自動車・車載メーカーからも自社で解決できない解析や評価のご依頼を数多く、頂いております。また、業界でも大きな課題となっているSiCの結晶欠陥の問題についてはここ数年、検査装置開発の事業部が独自の解析手法を用いた解析装置の開発に取り組んでいます。この検査装置開発の事業部は、もともと太陽電池の不良パネルを特定する検査装置市場において、工場でのパネル出荷検査用のEL/PL検査装置や、太陽光発電所現場での不良パネルを特定する装置で、既に多くの関係者の方々にお使いいただいていますが、今年度はグリーン戦略が掲げる”住宅・建築物産業/次世代型太陽光産業”に深く入りこもうとしています。この産業分野は、省エネ住宅、スマートハウスの実現、普及を目指すものですが、そのためには住宅太陽光の進化、発展が欠かせません。また、商業施設、公共施設の屋根スペースが、従来の野立ての発電所に加え、重要な太陽光発電スペースとしての有効活用が進められています。昨年、大型台風・大雨等による災害時の太陽光パネルの発火事故など太陽光パネルは安全性も大きな課題としてマスコミにも取り上げられましたが、太陽光発電の稼働状態を、特に安全面を重視し監視できる装置をIT技術も援用しながら住宅、及び施設屋根の太陽光発電の市場に投入しようと検討を重ねています。一方、住宅以外の太陽光発電の世界では、FIT制度の後押しでこの10年急速に全国各所に設置が進んだ太陽光発電所ですが、今後、愈々、リユース、リサイクル、廃棄といったセカンダリー市場が活気を呈すると見られています。この領域は、グリーン戦略が掲げる重点分野の一つ、”資源循環関連産業”の活性化、即ち、循環型社会の実現にも深く関係し、当社ではパネル検査技術のノウハウがこの分野でも大いに活かせると考えており、そのための装置開発にも取り組んでいます。
当社のもうひとつの事業部であるメーカー保守対象外の電子機器全般の保守・修理サービスを行っている事業部ですが、現在、依頼を受けた電子機器の修理・保守を個別に行うという事業モデルから一歩進んで、工場現場や執務室における電子機器の長期継続使用に貢献するサービスを展開するという事業モデルに転換を図ろうとしています。分かりやすい例を上げると、古い機器で現在もフロッピーディスクに収めたデータとやり取りしないと業務が成立しないような場合には、フロッピーディスクドライブが故障したときに中古市場を当たり代替品を探し交換するという提案をかつては行っていたわけです。それを、ドライブが故障する前にUSBメモリーなり、現在普及している他のメディアにデータの複製を行った上で、たとえばSSD等の、それ用の新たなドライブ/インターフェースでの置き換えを提案する、というコンセプトに基づいたサービス展開に発展させています。その場しのぎではなく、より快適な長期継続使用を支援するような提案を行うことを目指しています。また、別の例ですが、昨年は、1ユニット30kgを超える生産品を手動で運搬、整理する作業を行っていたあるお客様の製造現場で、全体としての生産性をさらに向上させるためロボットによる自動化搬送設備の開発に協力し、昨年秋、納品しました。こういった既存設備の長期継続使用に貢献するサービスコンセプトはまさに、グリーン戦略が掲げる”資源循環関連産業”の活性化、循環型社会の実現に大きく寄与すると考えております。

このように私共の事業は、いずれも国が強力に推進しようしているいくつかの分野と密接に繋がっています。つまり、いい地盤、いい土壌に立っていると捉えています。
ただし、自然を相手にする農業と同じく、いくら土壌がよくても、天候に合わせることができなかったり、肥料をその種類や量、タイミングを誤って与えたりすれば、いくら水だけやっても芽を吹き、花を咲かせ、実を結ばせることはできません。当社の各事業が、世の中に受け入れてもらえるかどうかは、いずれの分野においても独りよがりの考えに陥ることなく、外部環境に合わせて、製品・サービスの受益者であるお客様が真に求めるものを、場合によっては自己変革してでも、タイムリーに提供できるかにかかっている、と覚悟を決めています。

今年日本は、昨年のコロナ禍による大幅な落ち込みの反動でマイナス成長からプラス成長にはなるものの、V字回復ではなく、レの字回復に向かうだろう、と言われています。回復のスピードは遅いとの見方です。感染一服と再拡大を繰り返しながらコロナの影響が引き続き尾を引くことと、下降線を辿る現在の日本の潜在成長率の低さという構造的な要因があるためと思われます。

当社は、脱炭素とDXという2大潮流に身を任せ、これらを追い風として十分活用しながら外部環境を的確に捉えること、そして今年もコロナという逆風に対しては、この向かい風を利用して逆に浮揚できないかを模索しながらレの字回復の「レ」の下のハネを十分高く跳ね上げる年にしようと全社一丸となって取り組んで参ります。

本年もよろしくお願い申し上げます。

2021年1月 代表取締役社長

五十嵐 靖行