「自律分散型社会の実現、サーキュラ―エコノミー(循環経済)への転換を促進させるため次世代エネルギー技術の進化発展に資する技術、および グリーン社会へのソリューション技術を提供し、社会に貢献する」
この度の令和6年能登半島地震により被災された皆様ならびにご家族の皆様に心よりお見舞い申し上げます。皆様のご無事と一日も早い復旧・復興をお祈り申し上げます。

1.昨年の出来事と実績
当社は昨年、創立30周年を迎えることができました。これもひとえに長年にわたる皆様方からの温かいご支援、ご愛顧の賜物と深く感謝申し上げます。一昨年の8月には、自社ビルを滋賀県大津市栗林町に建設し、野洲市と栗東市の2か所、計3か所に分散していた事業部門を一か所に統合いたしました。昨年は、パワー半導体関連を中心に評価・解析・試験の受託サービスが好調であり、ウェハサービス事業も一昨年に続き旺盛な需要を背景に多くの受注を頂きました。さらに、太陽光発電や電子機器の保守・修理といったサーキュラーエコノミー関連事業も順調に売上を伸ばし、過去10年間で最高の収益を上げることが出来ました。一方で、昨年10月には当社のサーバーがランサムウェアによるサイバー攻撃を受け、一部のデータに暗号化による損失を被るというセキュリティインシデントに見舞われました。お客様をはじめご関係者の方々にご迷惑ご心配をおかけし、誠に申し訳ありませんでした。現時点で個人情報やお客様情報の漏洩による不正利用は確認されておりませんが、社会的信用の失墜に繋がりかねない大きな事態と受け止め、セキュリティ対策の一層の強化に取り組んでまいります。
また、昨年8月には持続可能な社会の実現に向け、社内にSDGs推進委員会を立ち上げ、SDGs17のゴールのうち当社で今まで取り組んできた項目や取り組むべきテーマについて議論いたしました。今後さらにそれらに関連した具体的な行動計画について検討を重ね、今年度は目標を定め積極的に実行してまいります。
2.産業界の動き
私は以前から、現在のテクノロジー進化には二つの大きな流れがあると認識しています。一つは、人類の根源的な欲求から生じる流れであり、現状より少しでも快適に暮らしたい、楽しく便利に過ごしたいという欲望がもたらすものです。この欲求が最先端テクノロジーの進化を促し、高速、高密度、一括処理、高分解能、軽薄短小化などの技術革新を生み出してきました。
しかしながら、この快適さを求める飽くなき探求心から、地球資源の過度な消費や不要な物質の野放図な廃棄といった行動が繰り返される中で、ちょっと待てよ、このまま突き進んで我々の住んでいるこの地球、本当に大丈夫なのか?と20世紀も終わりのころ、我々は徐々に疑念を抱くようになりました。そして何とかしないといけないと真剣に、そして国際的に地球環境の問題に取り組むべきであるという意識が高まったのはつい最近のことです。その一つの契機が、2015年のCOP21(国連気候変動枠組み条約締約国会議)であり、パリ協定の採択がその象徴と言えるでしょう。ご承知の通り、この協定は、産業革命以前と比べ、地球の平均気温上昇を1.5℃に抑えることを目指す国際的な枠組みです。この目標を達成するため、世界各地で新たな技術が開発されつつあります。この地球環境を守るための技術開発はテクノロジー進化のもうひとつの潮流であると私は捉えています。少し乱暴な言い方を許していただければ、このテクノロジー進化の二つの流れのうち、高速化、高密度化といったパフォーマンス追求の流れは、デジタル化(DX、Digital Transformation)、地球環境維持に貢献する技術開発の流れは、グリーン化(GX、Green Transformation)と表現できるかもしれません。
そして、これら二つの潮流に加えて、ここ3,4年のコロナ禍以降にさらにもう一つ、産業界の動向を方向付ける流れが押し寄せています。それは「経済安全保障」という枠組みです。ここで政治的な議論に深入りするつもりはありませんが、各国の産業政策に大きく影響していることは否定できません。米中対立から発展して民主主義国家と権威(覇権)主義国家の衝突から、サプライチェーンの強靭化を目指す主要各国の半導体戦略などに色濃く表れています(米「CHIPS法」、中国「国家集積回路産業投資基金」、欧州「デジタル・コンパス2030」「欧州半導体法案」 など)。国内に目を向けても、台湾に本社を構える世界有数の半導体受託製造企業の熊本への誘致、「Beyond 2nm」の最先端量産技術の導入を旗印に政府が後押しし国内主要企業8社も出資する先端半導体企業の設立、あるいは経産省の掲げる日本発のペロブスカイト太陽電池の製品化と普及に向けた取組みなどがいい例です。
このように、経済安全保障の実現を念頭に置きながら現在の産業界はDXとGXを推進する方向に動いていると言えます。
3.当社の役割と今年の活動計画
上記の流れを追い風として、当社は引き続き
「自律分散型社会の実現、サーキュラ―エコノミー(循環経済)への転換を促進させるため次世代エネルギー技術の進化発展に資する技術、および グリーン社会へのソリューション技術を提供し、社会に貢献する」
を全社方針に掲げ、これまで以上に強力に推進してまいります。
具体的な今年度の重点施策として、
- パワー半導体関連事業、ディスプレイ関連事業、太陽光発電関連事業の深化、発展
- パワー半導体、ディスプレイ関連、次世代太陽光パネルに関する解析・評価技術の開発と応用
- SiCウェハ欠陥検査・解析装置の試作機完成
- イタリア社製パワー半導体テスターの保守事業の開始
- IT技術を取り入れた業務の効率化、及び深化、付加価値の創出
- AI、機械学習の利活用
- 修理・保守事業の業務効率改善による営業利益率の向上
- 化学物質、等の管理体制の整備・強化
- DX化の推進 (各種手続きにおける紙物、印鑑による認証の排除、等)
- サステイナブルな社会の実現に向けての活動(SDGs活動の実践)
- SDGs視点での事業活動の見直し
- SDGs推進委員会にて提案された各種行動の中から優先順位の決定と目標値の設定
- サイバーセキュリティの強化
- 健康経営の推進
を掲げ、実行に移してまいります。
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
2024年 一月吉日
代表取締役社長 五十嵐 靖行