パワーサイクル試験

エンジンルーム内にパワーモジュールが配置される場合は一般産業用途に比べて 格段に高いレベルの温度サイクル疲労に対する長寿命化が求められます。
その動作寿命の推定には通常、パワーサイクル試験(断続通電試験)が適用されます。
アイテスでは、パワーモジュールに関する主要な評価項目であるパワーサイクル試験の受託サービスを始めました。

パワーサイクル試験とは

パワーサイクル試験には、ΔTjパワーサイクル試験とΔTcパワーサイクル試験の 2種類があります。
パワーモジュール

ΔTj パワーサイクル試験

接合温度を比較的短時間の周期で上昇・下降させます。
主にワイヤ接合部、及び、チップ下はんだ接合部の寿命評価です

ΔTc パワーサイクル試験

ケース温度が、任意の温度に到達した時点で通電を止め、ケース温度が通電前の状態に戻るまでの周期を1サイクルとして繰り返します。
主に、絶縁基板とベース間のはんだ接合部、及び、チップ下はんだ接合部の寿命評価です。

パワーサイクル試験受託装置、受託試験条件設定の概要

受託試験で用いられる本装置は、パワー素子に、規定の電力を消費させ、決められた時間内で断続通電を 行い、試料の信頼性を評価する装置です。同時に熱抵抗測定も可能であり、そのデータをHOST PCに取りこみます。(IGBT、IPM、DIODEなどを受託対象としています。)

サンプルの接続:4x4測定ch
加熱用電源1台当たり4素子まで直列に接続可能
(マルチプレクサで想定サンプルを切り替え)
測定モード:最大16chまで可能なモード
 Diodeモード
 MOSFET(MOS Diode, Satモード)
 IGBT(MOS Diode, Satモード)
電源当たり1サンプルで制御可能
 Rds,ONモード
計測:サンプリング周期 最大1MS/s
分解能 最小16μV(62.5mVレンジ)
 冷却治具:モジュール用冷却プレート及びチラー
TO-pkg用冷却プレート
直冷用ステージ及びチラー
温度特性用プレート及びチラー
加熱用電源:最大600Ax4台
 分解能 500mA、 精度 0.1%+0.9A、 電圧 最大12V
 立ち上がり 50ms以下、 立ち下り時間 100us
測定用電流源:最大1Ax4台
 分解能 0.5mA、 精度 0.5%+1.25mA
ゲート電圧源:最大 -10~20Vx16台
 分解能 10mV、 精度 0.5%+50mV
計測:サンプリング周期 最大1MS/s
 分解能 最小 16μV(62.5mVレンジ)

パワーサイクル試験 実施例(IGBT ΔTjパワーサイクル試験)

(1)試験開始前にパワー素子の温度係数(Kファクタ)を測定します。Kファクタは、素子内部、半導体のジャンクションの温度特性を表すパラメータです。
 温度係数(Kファクタ)測定
 以上から、KファクタとしてK= 1/2.23 [℃/mV] が得られました。
(2)試験条件を決定します。
 印加電流 Ic = 100A
 Tj max.=175℃ と Tj min. =50℃( ΔTj = Tj max – Tj min = 125℃ )
 昇温時間(ON時間)と冷却時間(OFF時間)を①、②の条件を満たすように設定し、1サイクルの時間を決定します。
尚、Tj はKファクタを用いて、Vceの測定値から求められます。
(3)パワーサイクル試験を実施します。
毎サイクル、ON、OFF時のVceをそれぞれ記録します。
記録したデータから、以下の通り、過渡熱抵抗が計算できます。
過渡熱抵抗 (ジャンクションtoエア(周囲)): Rth(j-a) は
  Rth(j-a)= Δ(Tj – Ta)/P = (ΔTj -ΔTa )/P
= ΔTj/P
= (ΔVce・K)・(1 / (Vce*Ic)) ∵ Ta=周囲温度であり、ΔTa=0
(4)過渡熱抵抗の経時劣化
この例では、4個のパワー素子に対し、15,000サイクル、試験を行いました。過渡熱抵抗の変化を以下のグラフに示します。(試料番号A4では大きな劣化が認められます。)
 

過渡熱抵抗の経時劣化

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