いつもご覧いただいており有難うございます。お蔭様で明日から修理屋さんも12回目を迎える事ができました。
今回は最終回ですので、これまでの内容をダイジェストで振り返っていきたいと思います。
コンデンサ不良
第1回目はコンデンサについてご紹介しました。
コンデンサにもいくつか種類がございますが、パソコンによく使用されている物は電解コンデンサと呼ばれるもので中に電解液という液状のものが入っています。
原因はさまざまですが以下のようになると、パソコンが正常に使えない状況になります。
また電解液が漏れてしまうと基板を腐食されてしまう場合があるため、アイテスでは長期使われたパソコンの予防交換(オーバーホール)を積極的に推奨しております。
冷却ファンの故障
第2回目は冷却ファンについてご紹介しました。
パソコンには発熱する部分(CPU・電源・HDD・チップセットなど)が複数あります。
それらを長時間において安定動作させるためには当然冷やす必要があり、この『冷却ファン』が活躍しています。
ファンにホコリが溜まってくると、効率よく放熱ができずパソコン内部に熱を帯びます。そうなるとファン自体は高速回転を繰り返してしまい寿命を短くし、熱に弱い部品(例:電解コンデンサ)の寿命も大幅に縮める事になります。
ホコリと飛ばして定期的なメンテナンスをすると、パソコンの寿命も延ばすことができます。
HDD編
第3回目はHDD(ハードディスクドライブ)についてご紹介しました。
ハードディスクは、ディスクの磁気の認識によってデータを読み込んでいます。
ディスクとの磁気ヘッドのすき間はなんと0.00001mmなので、外からでも衝撃を与えられるとアームが揺れてディスクに接触してしまい、磁性体のコーティングが剥がれて磁気が読めなくなります。また、剥がれた部分だけではなく、剥がれたコーティングのゴミがディスク内部で散らばってしまい、更に状況を悪化させて、アクセスできなくなる箇所はどんどん増えていきます。
最近では制御方法が進化したためかなり精密度があがり、少しの衝撃では壊れにくくなりましたが、構造上やはり衝撃には弱いのは変わりがありません。パソコンを移動させる場合は必ず電源を切るかスリープにさせて移動させることや、パソコンに衝撃を与えたり揺らしたりしないことが大切です。
バッテリー編
第4回目はバッテリーについてご紹介しました。
ここ10年以内のほとんどの機種で採用されているリチウムイオンは満充電させずに、80%程の充電状態で使用すると、長持ちします。できるだけフルで充電しないように、使用することが大切です。メーカーのノートパソコンであると、電源オプションやアプリケーションの設定から、充電を80%に制限できるものがあります。もし設定できるようであれば、うまく活用して過充電状態にならないように注意しましょう。また、放電してバッテリーの残量が減ってきた場合は、0%にせず途中で充電する方がバッテリーに優しいです。リチウムイオンは熱に弱く、常にフルで充電している状態だと劣化も早くなってしまいます。バッテリーを使わない場合は、50%くらいの充電残量にして保管しましょう。使い方を工夫すると寿命も大きく変わってきます。
液晶パネル編
第5回目は液晶パネルについてご紹介しました。
アイテスではLEDバックライトが主流となった今でも、数ヶ月の間で以下の写真ほどのCCFLの交換をしています。 お客様からは「愛着があるパソコンをどうしても直して欲しい」、「産業装置で置き換えが簡単にできない」等の声をお聞きしております。CCFLは長さや太さが違うと使えないため、アイテスでは30種類程の在庫を持っています。LEDバックライトについては、構造上どうしても交換が難しいためパネル交換対応となっていますが、特殊な薄型のパネルを除き、よく使われるものを20種類程の在庫を持っております。
また最近の軽量パソコンに搭載されている液晶は、下の写真のように、SDカードとほとんど厚さが変わらないものがあります。このような薄型パネルは、非常に衝撃に弱く、ちょっとした事で割れてしまいます。軽量パソコンは持ち運びを想定して軽く作られていることもあり、耐衝撃性を犠牲にしているところがあります。パソコンをあまり圧迫しないように注意して取り扱うことが大切です。
キーボード編
第6回目はキーボードについてご紹介しました。
キーボードの不具合で一番多いのは、液体をこぼしてしまって効かなくなったという不良です。一度液体が混入してしまうと、拭いても完全に除去することは困難です。 液損させてしまった場合、最初のうちは使えるかもしれませんが、腐食が進行し使えなくなります。パソコンを故障させないためには、やはりPCの近くに飲み物などの液体は置かないのがベストです。また、キートップの劣化(外れ)ですが、日頃から「キーの真ん中を押すことを意識する」ことにより、キーボードの負担を軽減し、長持ちさせることが可能です。
光学ドライブ編
第7回目は光学ドライブについてご紹介しました。
光学ドライブの最も多い不具合は、やはり“読み込みや書き込みができない”という症状になります。
読み込みや書き込み不良の原因については、“レンズ汚れ”の可能性があり、レンズクリーナーで解決することもよくあります。特にPC使用時に喫煙されている場合は、レンズがヤニで曇ってしまっていることが考えられるため、不具合を感じたら交換や修理に出す前に、まずはレンズクリーニングを試してみるのもよいでしょう。
またパソコンが突然壊れ、ディスクが取り出せなくなって困った時は、“ゼムクリップ”を使うと、簡単に強制イジェクトさせることができます。ゼムクリップの一番外側を下の写真のように真っ直ぐにすることによって、強制イジェクトさせるツールになります。できるだけ硬めのゼムクリップを使うことをオススメします。イジェクトボタン付近にある穴に、クリップを静かに差込み、突き当たったところで強く押します。そうするとドライブが開きますので、ディスクを取り出してください。
電源ユニット編
第8回目は電源ユニットについてご紹介しました。
電源ユニットには、マザーボードと同じくコンデンサが多く搭載されています。しかし、マザーボードよりも狭い空間に密集しているため、熱等の負荷も大きくなります。
電源ユニットの修理は、小さい基板であるにもかかわらずケースの分解や基板を取り外す工程が複雑で、マザーボードとは異なる労力、解析ノウハウを要します。
また電源の修理を行う際は、日本のメーカー製かつ最高温度が105℃以上のコンデンサを使用しています。海外製も昨今は品質の向上も著しく、なにより安価なのですが、せっかく修理したパソコンをお客様に永く使用していただきたいという思いで、より良いものを選択しています。
ちなみに、ACアダプタに不具合が出た場合は、アイテスでは「修理対応」ではなく「交換対応」を行っております。ご存知の通り、ACアダプタは密封されているため、分解・修理に手間がかかり、コストが見合わないからです。
メモリ編
第9回目はメモリについてご紹介しました。
メモリの不良で一番多いのはメモリ自体が壊れてしまうことですが、次に多いのがメモリソケットとメモリ間での接触不良です。これはメモリをクリーニングすることによって解決できる場合が多いので、故障と思われる際はお試しください。
具体的に何をするのかといいますと、金タブの部分を消しゴムで擦ります。消しゴムは必ず、消しカスがまとまるタイプを使用してください。そして柔らかい布で拭いて、消しカスをきれいに取り除いてください。メモリを装着する時は、一回メモリを抜き挿ししてからしっかりと挿し込んでください。上がクリーニング前、下がクリーニング後の写真です。金タブのクスミの違いが、お分かりいただけると思います。
外装(筐体)編
第10回目は外装(筐体)についてご紹介しました。
最近のパソコンはネジが緩みやすい傾向にあります。修理依頼品のネジがきちんと留まっていないことがよくあります。特にエントリーマシン(ローエンドマシン)などはネジ緩みがひどく、稀にネジが欠落してしまっているものもあります。初期段階で気づけばネジを増し締めするだけで済みますので、定期的に増し締めすることをオススメします。
写真はネジが外れてしまって隙間ができてしまっている状況です。
SSD編
第11回目はSSD(ソリッドステートドライブ)についてご紹介しました。
SSDの故障率はHDDより少なく感じられます。価格は少し高いですが高速で衝撃にも強いので、今後普及すると思われます。弊社ではSSDへのグレードアップの対応を行っております。XPより以前のパソコンでは対応が難しい場合や高額になってしまう場合もありますが、気軽にご相談いただければと思います。
最後に・・・
修理のノウハウを惜しみなくお伝えする本企画『明日から修理屋さん』いかがでしたでしょうか。 当初、何の根拠もなく「全12回!」という連載回数を設定してしまい、半ば見切り発車的なスタートにて不安も多々ございましたが、皆様の温かい応援によって、なんとか最後まで完走することができました。
今回で最終回となりますがパソコンについての取り扱い方や簡単な小技などはまた「番外編」や「中級編」として紹介できればと思います。1年間本当に有難うございました。