EDX分析時の加速電圧の違いによる変化

EDX分析を行う際には元素の検出感度を上げる為に高い加速電圧で分析を行っている方も多いのではないでしょうか?しかし目的によっては必ずしも高加速電圧での分析が最良とは限りません。今回、加速電圧の違いによる変化を確認しましたのでご紹介します。

テスト試料(LED蛍光体)

白色LEDは青色LEDに黄色の蛍光体(粉体)を組み合わせて白色光を発生させている。今回、この蛍光体について加速電圧を変え面分析(元素分布マップ)を行うと、どのような違いがあるのか確認しました。

TEST試料

*YAG:イットリウム・アルミニウム・ガーネット(Y3Al5O12)

加速電圧の違いによる面分析像

面分析ではYAGの成分であるアルミニウムで検出感度の違いによる分布状況を確認しました。

SEM像

SEM像

5kV

5kV

15kV

15kV

加速電圧が5kVの面分析像では、SEM像に見られる粒子形状とほぼ一致するようにアルミの分布が確認できます。
一方、加速電圧が15kVの像では、SEM像で粒子がない部分にもアルミの分布が見られます。なぜこのような現象が起こるのかモンテカルロシミュレーションにて確認してみました。

モンテカルロシミュレーションによる電子線散乱領域からの考察

加速5kVの入射電子
加速15kVの入射電子

加速電圧が5kVでは、試料表面から入射した電子の広がりが比較的浅い領域で散乱しており、表層付近に存在している粒子のみを検出していることが分かります。
一方、加速電圧が15kVでは、入射電子の広がりが5kVと比べて6倍近く内部深くまで散乱しており、表層以外にも奥の粒子を検出していることが分かります。そのため、SEM像では粒子が見られない部分にもアルミ粒子が分布しているように見られたのですね。

*EDXの分析では目的に合わせて適切な加速電圧を選定する事が重要になります。アイテスでは蓄積されたノウハウにより適切な条件で分析を行う事を心がけています。ご相談等御座いましたらお気軽にお問い合わせ下さい。

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