#3. 後悔なんて、Al-Cu
「採れたての金属膜をいただこうか」
お客様からそのような問い合わせをいただいたとき、半導体の前工程ラインではまずアルミ膜(Al-Cu)を提案することになります。アルミ膜は成膜直後から酸化が始まるため、新鮮さがとても重要であり、時間がたてばたつほど表面が白濁し最後は古い1円玉のような見た目になります。今日はこの『アルミ膜(Al-Cu/アルカッパー)』について浅く広くエッチングしてみましょう。
Al-Cuは半導体の歴史の中でも古くから使用される金属膜となり、99.5%のアルミニウムと0.5%の銅(Cu)で構成されたものが一般的です。意図的に少しだけCuを含有させることで半導体の配線寿命である『エレクトロマイグレーション』を防ぐ目的があります。

エレクトロマイグレーションは、簡単に言うとアルミなどの金属膜(配線)を電子が移動する際に金属原子も移動し、そこに偏りができることによっておこる断線やヒロックなどの形状変化です。


また、Al-Cuの最もスタンダードな成膜方法はスパッタリング法です。真空槽の中をアルゴンガスで満たし、高い電圧をかけてプラズマを発生させて、アルゴンの原子をアルミニウムのかたまりに勢いよくぶつけます。その際に飛び散ったアルミが基板に付着することで薄膜を形成します。イラストは割愛しますが文字だけだとなかなか荒っぽいですね。
そうやって基板にAl-Cuを成膜するとき、用途や評価方法に合わせて、様々な下地膜や保護膜を組み合わせます。もちろん全て意味がありますので覚えておくと便利です。
改めて考えると、アルミ膜(Al-Cu)はひたすらに手のかかるドジっ子に見えるかもしれません。しかし、その作業性と生産性から半導体の一時代を担ってきたレジェンドでもあるのです。
少し半導体の世界のことを好きになっていただけましたでしょうか。