#2. 窒化ガリウムは伊達じゃない
「この店で、一番高価な商品をいただこうか」
お客様からそのようなリクエストをいただいたとき、伏し目がちにGaNをそっと差し出します。パワー半導体の素材としてSiCと双璧をなす次世代の素材 GaN。今日はこの『GaN(ガリウムナイトライド/窒化ガリウム)』について思いを巡らせてみましょう。
かつて、半導体の材料はゲルマニウム(Ge)でした。その後 安価で扱いやすいシリコン(Si)の登場により半導体の市場はシリコンが完全に席巻し、現在に至ります。
したがってあらゆる半導体設備はこのシリコンを想定し、シリコンを中心に存在しています。しかしながら、留まることが無い半導体の小型化、高性能化において、シリコンでは限界に到達し、新たな素材として比較的シリコンに近い特性を持つSiCが脚光を浴びます。そして、更にその先の素材がGaNとなります。
パワー半導体材料としての総合適性を定量化した「バリガ性能指数」では、シリコンを1としてSiCは500と桁違いに高く、GaNはさらに高い930となります。このことからも、GaNは未来の半導体デバイスの高性能化を期待された素材と言えます。
GaNを用いる最大のメリットは『電力損失が少ない』事に尽きます。各社が巨額の予算を投じて開発に取り組む背景には、GaNの製品化は省エネやCO2削減といった世界的な課題や取り組みに合致するという大義名分があるからです。
GaNのエネルギー損失はSiと比較すると1/10と言われています。
ここまでの内容で薄々お気付きのとおり、GaNはまだまだ未完成の素材です。
理由はSiCの課題でもある『材料が高価』『シリコンで培った技術や設備の転用が困難』『結晶性が不安定で量産ができない』で全て被りますが、GaNはそれら課題も軒並みSiCの上位互換であり、製品として市場に流通するのはもう少し先になりそうです。
そのネーミングと性能から、白いモビルスーツにGaNの縦型パワー半導体が使用されているのはもはや疑う余地がありません。効率性に優れ、非常に高い電圧耐性をもつGaNですが、落下するアクシズを受け止めようとしたらそれはさすがに壊れますよ笑。
少し半導体の世界のことを好きになっていただけましたでしょうか。
(つづく)