化学反応機構研究所 材料変色原因解明事例

製品の製造において、原料となる材料の保存安定性は必須ですが、加工プロセスにおける環境条件が不具合を誘発させることがあります。
コーティング剤、複合膜構成素材、各種成形品等に使用されるスーパーエンプラ、ポリアミドイミド(PAI)膜の
変色原因を機器分析、および反応機構により解明した事例をご紹介します。

素材ポリアミドイミドについて

ポリアミドイミドは、耐熱性、機械的強度、摺動特性、耐薬品性に優れた材料であり、ワイヤーコート、
フィルムシート、ICソケット、軸受、ナットなどその用途は多種多様です。
分子構造は、以下の通りですが、アミド結合部、イミド結合部が剛直性と分子間力によるポリマー密度を上げ、
σ結合部で可撓性、柔軟性を付与しています。
結合のバランスはモノマー種でコントロール可能となります。

ポリアミドイミド(PAI)の分子構造

電子の共鳴共役によりσ結合回転は抑制され剛直となり、ポリマー分子間力が強くなる。

IR装置による分析結果

有機物定性分析に使用されるFT-IR装置にてIRスペクトルデータを取得しベンゼン環ピークを基準として比較。

IRスペクトル
原料

原料

原料の硬化部と変色部

硬化部 変色部

データ解析、および反応機構

カイザー(cm^-1)1775171716631604-164914121376
吸収分子団イミド基C=O伸縮イミド基C=O伸縮第2アミド基アミド基C=O伸縮カルボキシレートイミド基Φ-N=伸縮
白変色部ピーク
(対原料)

化学反応機構

スペクトル反応機構解析

イミド基片方の正帯電したOCN結合炭素Cが水による求核攻撃を受け、加水分解し変色。
イミド基、およびベンゼン環2p軌道電子の共役による褐色の発色は、この加水分解により共役が減少したこと、極性構造変化による樹脂密度変化による。