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IR-OBIRCH の基本原理
図1-1のような、絶縁された2本の金属配線①と②があるとする。両配線間に定電圧を印加しても電流は流れない。
今、図1-2のように、ゴミなどの異物が両配線間にあれば、両配線間にリーク電流が流れる(配線①と②はリークしている)。
このとき、一般的に金属は温度が上がると抵抗が上昇するという性質を持っていることを念頭において、図1-3のように、部分的に加熱される場合を考える。図1-4のように、位置(a)の配線②が部分的に加熱される場合、この部分の配線には電流が流れていないので、抵抗が変化しても、リーク電流は変化しない。位置(a)の配線①が加熱されるときは、電流が流れているので、抵抗が変り(大きくなり)、リーク電流は変化する(減る)。配線以外の部分が加熱されるときは、配線の抵抗は変化しないので、リーク電流は変化しない。次に、位置(b)では、配線②および①の部分が加熱されるときは、位置(a)と同じリーク電流の変化が生じる。この位置(b)の異物が加熱されるときは、この異物固有の抵抗温度依存性によって抵抗値は変化し、リーク電流は変化する(例えば、温度が上がると抵抗が減少するような性質の異物であれば、リーク電流は増える)。最後に、位置(c)が加熱される場合は、位置(a)が加熱される場合と同じようなリーク電流の変化が生じ、配線②が加熱されるときリーク電流が変化する(減る)。
この部分的加熱をレーザ光照射で行い、その走査に合わせて電流変化を明暗の2次元コントラスト像に画像化すれば、図1-5に示すような電流変化像が得られ、電流の流れる経路や異物のある場所(リーク箇所)を絞り込むことができる。
この原理/現象を、レーザ光(Optical Beam)による(Induced)抵抗変化(Resistance CHange)を捉えているのでOBIRCH(Optical Beam Induced Resistance CHange : 光加熱抵抗変化: オバーク)と呼び、特にレーザ光として赤外レーザ(Infra Red)を用いるのでIR-OBIRCHと呼ぶ。
IR-OBIRCH 解析の原理
定電圧を印加した金属配線に近赤外レーザ光を走査/照射しながら、走査と同期して配線に流れる電流の変化をモニタする。配線材料はそれぞれ固有の抵抗温度依存性TCR(Temperature Coefficient of Resistance)を持っており、照射レーザの熱によって配線抵抗が変化し、その結果として電流が変化する(図2-1)。この変化量を明暗の2次元コントラスト像として表示すればIR-OBIRCH像が得られ、電流が流れる経路や、配線のショート箇所を知ることができる(図2-2)。近赤外レーザの波長は1300nmでSiのバンドギャップの約1.1μm(=1100nm)よりも長いためSi基板を透過し、Siチップ裏面からの解析が可能である。
SEI 解析の原理
図3-1のように、2種類の金属が接点Aと接点Bで接している閉回路を考える。接点Aを部分的に加熱すると、ゼーベック効果により熱起電力が生じて、この閉回路には熱起電流が流れる(いわゆる熱電対である)。同様に、接点Bを部分的に加熱しても、ゼーベック効果により、熱起電流が流れる。
図3-2のように、配線の高抵抗箇所の前後を接点Aと接点Bと考えて、レーザ光照射によって高抵抗箇所の前後を部分加熱すると、ゼーベック効果により熱起電力が生じて、熱起電流が流れる。この熱起電流を高感度電流アンプで検出して、レーザの走査に合わせて明暗の2次コントラスト像に画像化すれば、高抵抗箇所を絞り込むことができる(図3-3)。
このようにゼーベック効果に基づいてリーク箇所や高抵抗箇所を絞り込む方法をSEI法(Seebeck Effect Imaging)と呼ぶ。