ポリエチレンオキサイド(PEO)は、その極性構造由来の特性により多くの用途で使用されています。リチウムイオンポリマー二次電池の絶縁材や電解質、界面活性剤、化粧品、合成洗剤原料などその用途は幅広いです。今回、重合度、分子量の違うPEOをIR分析し、違いをスペクトルから読み取りデータ解析を試みました。
ポリエチレンオキサイド
ポリエチレンオキサイドは、その分子量によりPEG、PEO/POEと呼ばれ、PEGは分子量2万以下を指し、分子量が2万以上をPEO、またはPOEと呼びます。
分子構造は、以下に示すとおりで、エーテルとエチレンで構成されています。
―(CH2-CH2-O)n―
今回分析に使用したポリエチレンオキサイドの分子量は以下の3種類(n:重合度)
①約27万(n≒6,100)
②約90万(n≒20,000)
③約700万(n≒159,000)

分析サンプル
取得した各サンプルのIRスペクトル重ね合わせによるデータ解析
エチレン部に基準ピークを設け、エーテル結合に関与するピークに着目しました。

データ解析
エーテル結合は、概ね1000ー1200cm-1にピークが出るが、1096cm-1のスペクトル強度に差が見受けられます。
エチレン部CH2-CH2、およびエーテル部CH2-O-CH2は自由に回転しますが、回転効率はエーテル部の方が高い。
これは、水素Hの有無による立体障害が関係しています。
この回転によるコンホメーション変化(エントロピーS増加)は、エチレン部の結晶化、およびその密度を低下させます。
エチレン部ピーク強度を基準とした場合、重合度、そして分子量の増加はエーテル部のIR吸収に直接影響し、エーテル部のスペクトル強度を上げることとなります。
その他の分析解析手法によるアプローチも可能です。
アイテスでは、IR分析のみならず、ラマン分析、GC-MS、GPCなどその他の機器分析でもご対応可能です。
分析によるデータご提供とともに、アカデミックな材料知見による解釈もご提供いたします。
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