ポリエチレン樹脂には大きく分けて高密度ポリエチレン(HDPE)と低密度ポリエチレン(LDPE)の種類があります。それぞれ基本となる分子構造は同じですが、枝分かれ構造の多さなどの違いにより、ポリマーとしての性質も異なります。ここではHDPEとLDPEを各種分析から比較した例を紹介します。
高密度ポリエチレン(HDPE)
・枝分かれ構造が少ない
・結晶化度が高い
・透明度は低い
・機械強度、耐熱性、耐薬品性に優れている。
低密度ポリエチレン(LDPE)
・枝分かれ構造が多い
・結晶化度が低い
・透明度が高い
・柔らかく加工性に優れている
【用途】白いレジ袋、バケツ、
洗剤容器など硬い容器 等
【用途】透明な袋、ホース、
マヨネーズ容器など柔らかい容器 等
FT-IRによる主骨格の比較分析
FT-IR(顕微透過法)にてメチル基、メチレン鎖骨格の違いを比較しました。
枝分かれ構造の多いLDPEではHDPEと比較して末端メチル基の割合が大きい為、メチル基の吸収ピーク強度が大きい結果となりました。
EGA-MSによる熱分解温度の比較分析
EGA-MSではポリマーが熱分解を起こす温度帯について比較を行いました。
LDPEの枝分かれ構造部分は熱分解が生じやすい為、EGA-MSにて熱分解を起こす温度帯が広く、HDPEよりも低い温度帯から熱分解が始まっています。
熱分解GC-MSによる熱分解生成物の比較分析
熱分解GC-MS分析では熱分解生成物について比較分析を行いました。
熱分解生成物にはほとんど違いはありませんでしたが、僅かにLDPEでは枝分かれ構造由来のイソアルカンが検出されました。
基本骨格は同じHDPEとLDPEであっても、枝分かれ構造の違いから分析結果に差が見られました。
重合(合成)方法やプロセス条件の違いから、生成ポリマーの分子構造に差が生じます。
このような材料構造・材料特性の解析だけでなく、プロセス条件バラツキの把握、不具合、そして劣化現象などを様々な分析手法から考察いたします。