射出成形法によるプラスチック成形品は樹脂の溶融、金型への充填、冷却・保圧といった工程を経ていますが、
これらの条件が適切でない場合、内部に応力が残り(残留応力)、成形不良の原因となります。
二次元複屈折測定システムは、その応力の指標である複屈折位相差(歪)や流れ方向・応力方向(主軸方位)の視覚化が可能です。例として、ポリスチレン(PS)成形品を加熱条件で比較した複屈折評価をご紹介します。
装置原理(二次元複屈折測定システム)
複屈折を持つ透明体に光を当てると、その偏光状態が変化する性質がある。
左図の複屈折測定装置を使用することで、偏光情報を専用の偏光イメージセンサで視覚化することが可能となる。
本装置では523nm・543nm・575nmの波長を使用して、透明体を通過する前後の偏光状態を比較することで、複屈折を評価することができる。
評価サンプル
PS製シャーレ(射出成形法で製造)
未処理 90℃×2h
PS構造
射出成形法で成形されたPS製シャーレを用いて、ガラス転移温度付近で加熱を実施した。
PSは側鎖に大きい分極率を持つベンゼン環があるので、樹脂の配向方向の屈折率(α1)に対して垂直方向の屈折率(α2)が大きい性質を持つ。
測定データ(絶対値 主軸方位)
複屈折位相差をグラデーションで表示している。
ゲート付近はせん断速度が速く、せん断応力が増大。
加熱条件では残留応力が緩和されて、複屈折位相差が小さくなっている。
絶対値
未処理
90℃×2h
軸方位角度をグラデーションで表示している。
加熱することで、若干ではあるが、赤味と緑味が濃くなり、配向性が変わっている。
主軸方位
未処理
90℃×2h
線分析
複屈折位相差をグラフで表示。加熱条件の方が位相差が小さくなっていることがわかる。
測定方向
未処理
90℃×2h