#5. こんなの絶対 可視光線
「フォトジェニックな膜があると聞いたのだが」
お客様からそのような問い合わせをいただいたとき、あえて無色透明の薄膜をお勧めします。半導体で用いる無色透明の薄膜は、光の屈折と反射の作用によって鮮やかな色彩を放つことができるのです。今日はこの薄膜の発色現象『薄膜干渉(はくまくかんしょう)』について浅く広くエッチングしてみましょう。
先にも述べた通り、半導体で用いる薄膜の多くは膜そのものに色がついているわけではありません。そもそも私たちの目に見える『色』とは光の波長の長短であり、太陽光などは様々な波長が重なって透明に『見えて』います。そしてある条件で光が屈折や反射をすることで波長に強弱が生まれ、その結果 見えてくる色のことを構造色といいます。その中でも薄膜によっておこる構造色の現象が薄膜干渉です。
層間絶縁膜として用いられる酸化膜などは薄膜干渉の再現に最も適しており、その膜厚によって多種多様な色彩を表現することができます。逆に言えば、熟練の半導体技術者にもなると酸化膜の色でその膜厚を言い当てることも可能です。
それらの応用で、例えばシリコンウェハー上の酸化膜の厚みをnm単位で完璧に管理をすることができれば、膜厚の差による構造色の集合により、絵の具を使わずにウェハー上に色彩豊かな絵画作品を創作することもできてしまいます。フォトマスクを20枚くらい用いた版画の多色刷りのような作業になるので、モナ・リザなどの西洋絵画より、浮世絵なんかの方が向いているのかもしれません。
また、せっかく半導体の工程で作製するのですから、“世界一小さな絵画”に挑戦してみても面白いですね。製作費はフォトマスク20枚と膜厚調整の条件出し等で2000万円くらいでしょうか。クラウドファンディングで10社ほど募れば実現できそうです。いいぞ いいぞ。
一応『半導体 浮世絵』(笑)でWeb検索をして、と、
[馬本隆綱EE Times Japan]
https://eetimes.itmedia.co.jp/ee/articles/1906/26/news038.html
イメージ画像 出典:京都大学
・・・もうやっていたのですね。
少し半導体の世界のことを好きになっていただけましたでしょうか。
(つづく)