有機物の成分分析にはFT-IRやGC/MSがよく用いられます。成分分析を行う際に、FT-IRとGC/MSをどのように使い分けるのか一例を紹介します。
FT-IRを用いる主成分分析
成分未知のプラスチック製容器におけるFT-IR測定を行いました。

容器のIRスペクトルはポリプロピレン(PP)のスペクトルとほぼ一致することから、容器の主成分はPPであると言えます。
FT-IR測定では成分既知の物質のIRスペクトルと比較することによって有機物の主成分を分析することが出来ます。また、樹脂製品のフィラーとしてよく用いられる炭酸カルシウムやタルクなどは無機物であっても特徴的なIRスペクトルを示すため、一部の無機物も分析することが出来ます。なお、GC/MS測定では無機物のようにガス化しにくい物質を分析することは出来ません。そういった点からも、成分未知の物質を分析する場合、まずはFT-IR測定を行うことを推奨します。
GC/MSを用いる添加剤等の微量成分分析
主成分がPPである容器を少量採取し、熱脱着GC/MS測定※を行いました。
※主成分樹脂の熱分解温度よりも低い温度で揮発する物質の分析に適した設定でのGC/MS測定

熱脱着GC/MSのトータルイオンクロマトグラムにおいて複数のピークが観察されました。各ピークのMSスペクトル解析の結果、PP容器にフェノール系酸化防止剤とリン系酸化防止剤が含まれていることが示唆されました(大部分のピークはPPの分解生成物に由来するものと考えられます)。
添加剤の含有量は1%未満と非常に微量であることが多いですが、GC/MS測定ではppmオーダーで含まれる添加剤も分析することが出来ます。なお、FT-IR測定では最低でも数%以上含まれている物質でないと分析が困難です。成分未知の物質の主成分だけではなく、添加剤等の微量に含まれる有機物も分析したい場合にはGC/MS測定を行うことを推奨します。
成分分析を行う際は目的や試料に合わせて適切な分析手法を選択する必要があります。
分析手法の提案も出来ますので、まずはお気軽にご相談ください。