XPSによる正極活物質の状態分析 NMC(Li(NixMnyCoz)O2)はリチウムイオン電池の正極活物質として使用されています。NMC試薬について、XPSの状態分析による金属酸化物の価数の評価を行いました。 ■ XPSの原理 X 線と光電子のエネルギーから結合エネルギーを算出します。結合エネルギーは各元素に固有の値を持つため、ピーク位置から元素を同定することができます。化学状態 (価数、結合状態) の違いによりピーク位置がシフトします(化学シフト)。化学シフトを利用することで、各元素の化学結合状態を推定することができます。 ■ NMC試薬の分析 市販のNMC試薬(Li(Ni0.4Mn0.4Co0.2)O2)について定性分析を行いました。分析の結果、NiMnCo比は試薬の仕様(Ni:Mn:Co=2:2:1)に近い値が得られています。またバインダー成分由来と考えられるF,Cが検出されています。(Liは感度が低く定量性に欠けるため、定量計算からは除外しています。) NMC試薬(Li(Ni0.4Mn0.4Co0.2)O2) 各検出元素について状態分析を行いました。Ni,Mn,Coについては、実際には複数の価数の酸化物が混在しているものと考えられますが、主要な酸化物はNiO(Ni2+),MnO2(Mn4+),Co3O4(Co2+とCo3+の混合価数)と推測されます。C,O,Fについては、バインダー由来と推測される有機系のピークシフトが確認されます。なお各ピークアサインについては、各種文献、データベースを参考に推測したものになります。 XPS状態分析により各金属元素の価数を評価することができます。 お問い合わせはこちらから 株式会社アイテス 品質技術部 TEL:077-599-5020 メールでのお問い合わせはこちらから