液晶パネルのガラス基板とドライバICは導電粒子を介して接続されています。接続後の導電粒子形状には適度な変形具合が求められ、変形具合によっては液晶パネルが表示不良となる可能性もあります。本資料では平面方向と断面方向から導電粒子の様子を観察し、変形具合を確認した事例を紹介します。
① 液晶パネルとICの接続
ICと液晶パネルはACF(異方性導電フィルム)を用いたCOG方式により実装されています。ACFには導電粒子が分散しており、接続時の加熱圧着により粒子が変形し、IC側の電極とガラス基板側の配線が電気的に接続されます。変形具合によっては、液晶パネルの表示不良に発展する可能性も考えられます。
② 粒子の構造と変形具合
COG実装で使用する導電粒子の構造を図3に示します。核に樹脂ボールを使用し、その表面に導電のための金属層(ニッケルや金など)が成膜されています。
接続時に粒子が適度に変形し、ICとパネルを電気的に接続します。この状態の上面図と断面図を図4に示します。
粒子変形量が「中」程度であれば、樹脂ボールの復元力(ボールがつぶされても元の形状に戻ろうとする力)が働き、接続領域も確保されているため、安定した電気的接続が期待できます。一方、粒子変形量が「小」であると接続領域が小さくなり電気的な接続が不安定となり、液晶パネルの表示不良が懸念されます。また粒子変形量が「大」であると粒子にクラックが入り復元力がなくなったり、配線ダメージ等により電気的な接続が不安定となり、「小」と同様、液晶パネルの表示不良が懸念されます。
③ 粒子の平面観察
粒子を観察するため、平面観察を行った例を図5, 6に示します。ガラス基板側が透明配線(ITO)である場合、粒子の大まかな変形具合が確認できます。図4の基準を適用すると、配線と電極間に捕捉されている粒子の変形具合は「中」程度であることがわかります。一方、ガラス基板側が不透明配線(アルミニウムや銅)である場合、粒子形状は確認できないが粒子の圧着による凹凸が配線部に現れます。この凹凸程度により接続状態を推察することができます。いずれの場合もより詳細な確認には断面観察が推奨されます。
④ 粒子の断面観察
粒子の変形具合や接続状態を確認するため、断面観察を行いました。光学観察で粒子の存在を確認し、SEM観察にて粒子形状や接続状態を確認しました。SEM像の粒子に対して図4の基準を適用すると、粒子変形量は「中」であり、適度な変形具合であることがわかりました。
実装されたICでは、わずかに「反り」や「傾き」により、IC端部と中央部で粒子の変形量に差が生じ、表示不良の原因となる場合があります。その場合、平面方向と断面方向から導電粒子の変形具合を確認することで表示不良との関連性を探ることができます。
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