解析手法で最も基本的で応用範囲が広い光学顕微鏡観察からSEM観察、EDX元素分析までの流れをご紹介いたします。
光学顕微鏡による観察
光学顕微鏡による観察は最も基本的な観察手法の一つであり、大まかな形状観察等を素早く行えます。また、最大の特徴は色情報が得られることで、腐食等の変色を伴う異常の観察に活躍します。
![サンプルA(光学像)](https://www.ites.co.jp/wp-content/plugins/lazy-load/images/1x1.trans.gif)
サンプルA(光学像)
![サンプルB(光学像)](https://www.ites.co.jp/wp-content/plugins/lazy-load/images/1x1.trans.gif)
サンプルB(光学像)
光学顕微鏡観察では白色で半透明に見えるサンプルAとサンプルBの外観は似ていますが、同じものなのか詳しくSEMで観察します。(サンプルAとBが何かは最後にご紹介いたしますが予想してみて下さい。)
SEMによる観察
SEMによる観察は光学顕微鏡に比べはるかに高い倍率(数万倍)まで対応可能な為、微細な形状観察に用います。また光学顕微鏡のような色情報は得られませんが、材質(軽元素、重元素)によりコントラストが変わる特徴を生かし、樹脂と金属など材質の異なりを観察することができます。
![サンプルA(SEM像)](https://www.ites.co.jp/wp-content/plugins/lazy-load/images/1x1.trans.gif)
サンプルA(SEM像)
![サンプルB(SEM像)](https://www.ites.co.jp/wp-content/plugins/lazy-load/images/1x1.trans.gif)
サンプルB(SEM像)
サンプルAは光学観察では不明であった空隙が見られますが、サンプルBは比較的平坦で滑らかな形状です。次はこれらの成分が何かEDXによる元素分析を行います。
EDXによる元素分析
EDXによる元素分析では、対象物から得られるスペクトルにより含まれる元素を特定します。また、含まれる元素濃度を算出することや元素分布を確認することも可能です。
元素分析の結果、サンプルAから主に、C(炭素)、N(窒素)、O(酸素)、Ca(カルシウム)、P(リン)が検出されました。一方、サンプルBではC、Oのみの検出でした。
これまでの結果より、サンプルAは白色半透明で微細な空隙があり、C、N、O、Ca、Pが主体の物質であることから、何らかの生体物の骨が推察されます。
サンプルBは白色半透明で表面は滑らかな形状であり、C、Oが主体の物質であることから、何らかの有機系物と推測されます。(ちなみに正解はAが魚の骨、Bがエポキシの樹脂片でした。)サンプルAの空隙は骨の海綿骨と呼ばれる組織構造でCaが主体なのも骨の特徴ですね。
外観は似ていても複数の手法を用いることで違いを見つけ正解に近づくことができる事例でした。