液晶化合物のNMR分析

NMRは、分子を構成する原子どうしのつながりが分かる分析手法であり、質量分析や赤外分光法などと共に、化合物の構造決定に用いられます。今回は、液晶成分として使用される4-ブトキシ-4’-シアノビフェニル(CAS番号 52709-87-2)の1H NMR,13C NMR、及びDEPT測定を例として取り上げ、NMRで得られる情報について紹介します。

1H NMR測定

図1に1H NMR(400MHz, CDCl3)のチャートを示します。 δ1~4に4種のピークが出現しており、積分比、1H-1Hのカップリングによる分裂パターンからn-ブチル基(-CH2CH2CH2CH3)の水素として帰属されます。δ4.0付近の-CH2水素は、隣接する酸素原子の電子吸引の影響で低磁場側にシフトしています。δ7~8のピークは芳香環に結合した水素として帰属され、4種の水素がそれぞれ2個、計8H分、存在していることが分かります。今回は、試薬の試料を用いてNMR測定を行いましたが、図2に示しますように、液晶デイスプレイを構成する各材料を解体、分離し、液晶成分を分離精製してNMR測定を行うことも可能です。

図1 1H NMRスペクトル
図2 液晶デイスプレイの構成

13C NMR測定及びDEPT測定

図4の上段に13C NMR (100MHz, CDCl3)、下段にDEPT測定のチャートを示します。DEPTについての詳細な説明は割愛しますが、メチン基(CH基)、メチル基(CH3基)のシグナルは上向きに、メチレン基(CH2基)のシグナルは下向きに出現します。水素と結合していない4級炭素については、シグナルが消失します。

4-ブトキシ-4’-シアノビフェニルの13C NMRでは、δ110~170の範囲に9本のピークが観測され、二重結合(sp2)、三重結合(sp3)を形成する炭素が9種類存在することが分かります。DEPT測定の結果では、5本のシグナルが消失し、芳香環上のC-H結合は4種類のみであることが分かります。

ブトキシ基に関しては、末端のCH3基のみ、シグナルが上向きとなりますが、他の3つのCH2基は下向きに出現します。

その他のNMR測定手法

19F NMRや31P NMRの測定も可能です。液晶成分については、フッ素化合物が使用されることもありますが、19F NMRと組み合わせることで、フッ素の結合箇所を特定することが可能となります。

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