#4. わたしの、最高の層間絶縁膜
TEOSは英語名『Tetra Eth Oxy Silane』の頭文字をとって“TEOS”です。日本語では正珪酸四エチルと呼ばれる揮発性のアルコール化物であり化学式はSi(OC2H5)4だそうです。
このTEOS原料(液体)に添加物を用いてガス化し、プラズマCVDの装置でウェハー上に成膜したものがP-TEOS膜となります。

P-TEOSは主に素子やメタル配線の保護に用いられる層間絶縁膜の一種です。このP-TEOSがどれほど優秀かを知っていただくために、そもそも『優秀な層間絶縁膜とは』について定義してみましょう。
成膜温度は低温であるほど優秀
アルミ等の金属配線上に成膜するのですから、当然それらの融点よりも低い成膜温度でないと加工ができません。熱酸化膜 900~1000℃、減圧CVD 600~700℃に対し、P-TEOSは200~400℃と圧倒的な低温での成膜が可能です。因みにアルミの融点は660℃です。

膜質が緻密なほど優秀
層間絶縁膜の目的は文字通り配線間における『絶縁』です。膜の密度はそのまま耐電圧性能に直結します。つまり緻密な膜ほど、膜厚を薄く設計することができるのですね。これは成膜温度と密接に関係しており、さすがにP-TEOSは熱酸化膜や減圧CVDには敵いません。しかし、同じプラズマCVDの酸化膜(SiH4-oxide、BPSG等)の中ではトップクラスの“緻密さ”(絶縁性)を誇ります。
構造体への被覆性が良いほど優秀
配線上に成膜する際に、その配線に対し隙間なく均一に成膜されることが求められます。これも本来は熱酸化膜や減圧CVDが得意とするところですが、温度条件の制約がある中ではその均一性において、やはりP-TEOSの右に出るものはありません。
いかがでしょうか。もう一層のこと、絶縁膜はP-TEOSだけでいいのではないか、と思えてしまうほど万能な酸化膜なのです。まあ、真っ先にお勧めする理由は、成膜の処理が早く装置の回転率が突出して良い(生産性が高い)から、というのが本音ですが。
少し半導体の世界のことを好きになっていただけましたでしょうか。
(つづく)