#6. ポリシリコンの夜
「ラスボス感のある膜について、聞かせていただけませんか」
お客様からそのような問い合わせをいただいたとき、怯えた目をしながらポリシリコン膜を紹介します。半導体の最も基本的な材料であるシリコンウェハーと同じ素材でできた、まさに半導体of半導体とも呼べる究極の薄膜。今日はこの『ポリシリコン膜(Poly-Si)』について浅く広くエッチングしてみましょう。
通常、半導体の工程で用いるシリコンウェハーは『単結晶シリコン』です。純度が99.999999999%(イレブン・ナイン)と極めて高く全体が規則的な原子配列で構成されているため電子移動度も高く、デバイス作製の際に領域ごとの特性の差(ばらつき)が出にくいという特徴があります。

一方、ポリシリコンとは『多結晶シリコン』のことです。Polyは「多くの」という意味を持ち、すなわち小さな単結晶が複数つながった構造をしています。単結晶と比較すると強度が弱く、また電子移動度が低い(抵抗率が高い)という性質があります。
このポリシリコンに不純物を添加することで、意図的に電子移動度の高い部分を作り出すことができるので、金属などの電気を通す『導体』と酸化膜などの電気を通さない『絶縁体』のどちらの性質も併せ持つポリシリコンこそが『THE 半導体』と言えるのです。

他にはシリコンが結晶化されていない(非晶質)『アモルファスシリコン』というものがあります。単結晶や多結晶と比較して低い温度で生成できるため、安価で加工しやすいという特徴があり、ガラスや太陽電池、LCDやTFTなどの液晶ディスプレイに用いられています。

因みにシリコンウェハー上にこのポリシリコン膜を成膜する際、必ず下地膜として酸化膜の薄膜をいれます。
なぜか。

答えは、
ポリシリコン膜の膜厚を測定する際に、光学測定だとシリコンウェハーとポリシリコン膜の境界が分からなくなるので『膜厚を確認するために』酸化膜を挟むのですね。

少し半導体の世界のことを好きになっていただけましたでしょうか。
(つづく)