Vol.012 ラマンスペクトルの分解能検討 ~数字と実際~

 

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                 週間分析馬鹿(re)   Vol.012

  分析一筋十三年。分析ヲタクがお送りする、業務中の分析あるあるや面白い装置の紹介等
  描くコーナーです。気軽にしかし、妙なところで役に立つ内容をお送りします。
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                          ラマンスペクトルの分解能検討 ~数字と実際~

こんにちは、分析ヲタクです。

もう年末ですね。お陰様で今月は特にたくさんのご依頼を頂き、12月はてんてこ舞いでした。
(12月のブログ更新が遅くなっているのは秘密です)
 
今年最後の記事になりますので分析ヲタクが好きなラマンに関して書きたいと思います。
おかげさまでラマン分析のご依頼を多数頂いております。その中でふと気になることがありました。
 
実際に画面に表示されているスペクトル分解能は表示が同じだったら同じなのかな?
という疑問です。
(超マニアックな話題ですが、ご容赦を!だって気になるんですもん)
 
ラマンスペクトルのスペクトル分解能は以下のパラメーターによって決定されます。
①励起LASER波長
②グレーティング(回折格子)
③分光器光路長
④分光器前のスリット幅
 
①、③を固定して②、④のパラメーターを変えて比較してみました。
 
条件は以下の通りです。
条件1
①532nm
②600line/mm
③30cm
④10μm
画面に表示されている波数分解能:720cm-1で3.0cm-1です。
 
条件2
①532nm
②1800line/mm
③30cm
④100μm
画面に表示されている波数分解能:720cm-1で2.7cm-1です。
 
露光時間、積算回数、LASER強度はそろえました。
比較用サンプルとしてポリスチレンを持ってきました。
ポリスチレンを用意した理由は
ラマン活性が高く、1000cm-1付近にピークが出るベンゼン環の呼吸振動がシャープで
比較しやすいと考えたからです。
(本当は四塩化炭素やインデン等で比較するのが本道ですが、用意がしにくいサンプルなので、、、)
 
 
さて条件1,2でそれぞれ取得したスペクトルを下に記します。
わくわくしますね~。
 

 
緑が条件1,青が条件2です。
回折格子の線刻数が小さいとやはり明るいので、条件1はスペクトルの強度を強度を稼ぐことができてます。
スペクトル全体を見た感じでは差異がほとんどみられないので、1000cm-1付近のバンドに寄ってみてみましょう。
 

 
おお、結構違う。いやかなり違う。
条件2のスペクトル分解能の高さがわかります。
 
こうして実際に比較してみると
画面の表示されている分解能と実際に取得できているスペクトルは異なるということがわかりました。
 
この理由を分析ヲタクの頭でひねり出してみました。
理由の1つはCCD検出器の素子数にあるのでは?と考えました。
搭載しているCCD検出器の素子数は1024個です(横軸だけの素子数だけ示します)。
つまり回折格子を動かさずに一度に取れるスペクトルの点数は1024個になります。
条件1の場合は回折格子を動かさずに一度に取得したので、データの点数は1024個がMAXです。
しかし、条件2の時には4回、回折格子が動いていたので
1024×4=4096個のデータ点数になります。
つまり、点数が4倍も違うことになっています。
これが、教科書に載っている波数分解能の式以上に分解能が異なった原因と推定しました。
 
時代とともに機器が進歩しているので、教科書以外に書いてあることにも常に注意を払わねば!
と思った一件でした。
 
スッキリしたところでそれでは、良いお年を。
また来年もよろしくお願いします~。