トップ・メッセージ 2019年 年頭のご挨拶

”歌は世に連れ、世は歌に連れ”
このフレーズは有名ですが、この「歌」をそっくり「テクノロジ」に置き換えてもそのまま成立するように感じます。テクノロジは、世の中の願望によって磨かれていく一方、テクノロジが世の中を引っ張っていくこともあり、両者は切っても切れない関係を持っています。テクノロジという視点から昨今の時代の潮流を、私共の事業と関連の深い自動車・車載関連業界を例にとって見てみましょう。昨年2018年、年初の本メッセージでも触れたC.A.S.E.(*1)という言葉がこの一年、この業界でもてはやされました。昨年の業界の流れを代表するキーワードと言ってもいいでしょう。

この用語自体は、4つの頭文字で代表されるテクノロジに直結した業界トレンドを表しますが、その背景に何が起こっているかを考えると、これは自分と外のいろんな世界との”つながり”が高速かつ密接になってくるとモノを所有する時代から共有する時代へ、モノを重視する時代からコトを楽しむ時代に変化してきていること、そういった時代の要求に応えるために自動車関連業界が導き出したひとつの回答なのだと気がつきます。トヨタ自動車がソフトバンクと組んで新会社を興しMaaS(Mobility as a Service) (*2) を開始することを宣言したり、同じくトヨタ自動車が昨秋、定額サービス(サブスクリプション)を年明け早い時点で実験的に始めると発表したニュースなどは象徴的です。 定額サービス(サブスクリプション)については、同じく私共の事業と関連の深い太陽光発電業界でも同様のことが起こっていると考えられます。固定価格買取制度(FIT)を利用した発電電力を売電できる期間の終了を間近に控え、POST-ITならぬPOST-FIT時代に突入する今年、住宅用太陽電池普及の起爆剤になるかも知れない「無償設置モデル」はこれに近い発想だと思われます。

それでは、こういった世の中の動きに対して、アイテスが世に貢献できる立ち位置とはどこにあるのでしょうか。
コトを重視する時代においても、その末端にある”モノ”を充実させること、即ち、コトを重んじるシステムの中で
十分な機能を果たせるように”モノ”の完全性を追求することこそ、今のアイテスが直接貢献できる分野だと考えています。
この一年、アイテスは3つの分野、①自動車・車載関連分野、②環境・エネルギー分野、そして③IoT機器関連分野にフォーカスし、事業を進めてきました。
①については、関連電子部品、関連材料に関する受託分析・解析サービス
②については、太陽光発電の不良パネルを特定する検査装置の開発
③については、製造現場のIoT化、活性化を側面から支援する、メーカー保守対象外の電子機器の保守・修理サービス
これらの分野はこれからも世の中で求められる技術であり製品・サービスであるため、引き続きそれぞれの分野で求められるニーズに答えられる事業を展開していきます。

しかしながら、今後、世の中により大きな貢献をするため、世の中から頼られる存在としてさらにもう一段、
強固な位置を築き上げるためにアイテスの特長を活かしたある特定の分野に一歩、大きく踏み出したいと考えています。
それは、今後数年以内にパワー半導体の評価・解析の基地(ハブ、拠点)として成熟させ、日本のパワー半導体の評価・解析機関としての”顔”になることです。もともとアイテスは会社創立以来、20数年以上にわたりパワー半導体の解析・評価サービスを行っています。特に、デバイスの故障解析技術における特定の領域においては他社の追随を許さない豊富な経験と独自の技術を保有しています。また、過去10年にわたってパワー半導体の信頼性評価に役立つ設備を、少しずつ、補強してきており昨年は最新鋭のパワーサイクル試験機・熱解析装置を導入しました。今後はさらに、解析・評価能力を向上させることに加え、パワー半導体の素材として将来が期待されるSiC、GaN、GaOといった化合物半導体基板の欠陥解析や、Si以外の化合物半導体のウェハの調達サービスなども組み入れて、パワー半導体の生産工程の上流から下流まで深く関われる総合基地としてのポジションを確立したいと考えています。この分野は注力している自動車・車載関連市場とも密接に繋がっており、アイテスの提供できる力はCASE、MaaSの発展には不可欠の大きな推進力になると考えています。

社内活動においては、昨年年初に重要施策として2点を挙げ、1点目は一新した人事制度の締めくくりとして
教育制度、教育システムの再整備を行うこと。2点目として個々のプロジェクトの回転スピードを上げるため、
プロジェクトメンバー全員が自ら計画、チェック、そして改善、飛躍できるような「自律的活動」を促進させるための仕組みづくり、環境づくりに取り組むことを挙げました。教育制度は計画通り進め、新教育カリキュラムをスタートさせましたがその効果、検証はこれから推し進め必要に応じて修正してまいります。一方、「自律的活動」を促す仕組みづくりについてはまだ未整備であり、P-D-C-Aサイクルがまだ十分に回っていないプロジェクトも見受けられるため、今年はこの点に改めてフォーカスし、成果を上げていきたいと考えています。

2013年9月、東京がオリンピックの開催地に決定して以来、”2020年までは景気は浮揚する”と言われ続けてきた
浮かれ気分もどこ吹く風、巷の経済アナリストの予想では、日本の実質GDPの成長率は1.0%をやや下回るか
せいぜい1.0%程度というのが大方の見立て。昨年2018年の同成長率は1.2~1.4%と言われているのであきらかに減速。
さらに来年2020年は今年より緩やかに減速するだろうと予想されています。その要因として、米中”貿易”戦争
という名を借りた特にデジタル分野、ハイテク分野における両国の覇権争いの激化、そしてそれが少なからず
影響する米国、中国経済の減速が上げられています。国内に目を向ければ10月予定の消費増税と亥年という
12年に一度の統一地方選、参院選のダブル選挙。このように向こう1,2年は決して明るい未来が見えている
わけではありませんが、たとえ景気の減速があったとしても、それを言い訳にせず、アイテスの強みをさらに
発展させながら、強固な基盤を築いていく所存です。

2019年1月 代表取締役社長
五十嵐 靖行
*1) CASE: C:Connectedつながる;A:Autonomous自動運転;S:Sharedカーシェア;E:Electrified電動化
の4つの頭文字で表される今後の自動車産業の動向を示す。
*2) MaaS: 自動車に限らず、鉄道、バス、航空、船舶などあらゆる交通手段を情報通信技術(ICT)を活用して繋ぎ、ひとつのエコシステムを作り上げていく取り組み。