Vol.013(最終回) トラブル発生!至急復旧せよ ~GC/MS修理の流れ~

 

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               週間分析馬鹿(re)   Vol.013(最終回)

  分析一筋十三年。分析ヲタクがお送りする、業務中の分析あるあるや面白い装置の紹介等
  描くコーナーです。気軽にしかし、妙なところで役に立つ内容をお送りします。
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       トラブル発生!至急復旧せよ ~GC/MS修理の流れ~

明けましておめでとうございます。分析ヲタクです。
寒いですねー。人間にはこたえる寒さですが、装置さん達は寒いほうが元気に動いてくれるようです。
しかし、題名どおりですが、やっぱり連休明けは装置トラブルが頻発します。
年明け早々、GC/MSがダウンしました。
今回はロジカルに原因がわかったので、それを題材にして
どうやって原因箇所を特定したのかを書いていきます。

今回の症状は、
「サンプル打ち込み後、GC/MSのTICがノイジーな直線状のベースラインだけで試料の信号が出ない」
というものでした。真空は正常値、Heガスフロー圧も正常値でした。

PCからの制御がMS、GCともにでき、信号がPCに出力されているので電気系統(基板)の
故障はなさそうだということが分かります。基板が故障していると制御または信号の受け取りが
できなくなります。そう意味では今回は致命的な故障ではありません。

真空値の値が正常値範囲なので、接続部のリークもなさそう。
カラムに亀裂等が入り、割れると真空値が悪くなります。MSもベースラインが異常に上昇します。
リーク系のトラブルでもないようです。

次にピーク形状がノイジーな直線状のベースラインだったことから、
MSの検出器は生きているが、イオン化のところが怪しいと睨みました。
理由はイオンソース源が元気でしたら、カラム分解物由来のピークが立ってくるからです。

以上より、イオン化のところが怪しいと考え、ソフト上のイオン化に関するパラメーターを
見てみます。
見るところは
上から二つ目のEmission
下から二つ目のFilament Current
のところです。
※メーカーによって呼び名が異なるので、適宜そのメーカーの名称に読み替えてください。

写真の値は復旧後の値になるので正常値になっていますが
復旧前はこの二つの値がほぼ0になっていました。
ほぼ0ということはEIに必要な電子エネルギーが放出できていないと
いうことになります。

以上のことから、一番怪しいパーツは
「フィラメント」であり、
フィラメントが切れている or 切れかかっている
となります。

さて、ここまであたりをつけて初めてGC/MSをシャットダウンします。

立ち下げ後、イオンソース周りのパーツを確認。
おお、期待どおりフィラメント周辺が汚れており、フィラメントが怪しい感じです。
(写真は交換後の古いフィラメントです)

テスターで新品と古いものの抵抗値を見たところ、2つの値が大きく異なっていたので
やはりフィラメントが怪しいことがわかりました。
簡単にイオンソース周りを清掃し、再度装置に組み込みます。

その後、電源を入れると正常に制御ソフトが動作、真空値が正常の値まで達したことと
良く見る平凡なTICが取得できたことを確認して修理完了、今年の初仕事を終えました。

今年もこの装置にはバリバリ活躍してもらいたいと思います。
皆様からのたくさんのご依頼、ご相談をお待ちしております。

ただ一方で大変残念ではありますが、
分析ヲタクが描くこの週刊分析馬鹿は諸事情により今回をもって一旦休止とさせて頂くこととなりました。
メルマガ発足から読んでくださった読者の皆様、このブログから読み始めていただいた皆様、
これまで本当にありがとうございました。