#9 分析技術者ブログ Returns ~水溶液中のアンモニア(アンモニウムイオン)の定量~

はじめに

前回のブログは、阪神タイガースの日本一をきっかけに、1985年の化学界の出来事を振り返って話題を考えました。今回もそのような形で始めさせていただきます。

今年2024年は、甲子園球場ができて100周年になります。「化学の世界で、100年前といえば、・・・」などと、簡単には思い浮かびませんが、アンモニアについて、100年前の出来事を調べていたところ、以下のようなことがあったようです。

 

 

1924年のアンモニアに関する出来事

 ・日本国内でクロード法によるアンモニア量産開始(1000気圧下での製造)

 ・ハーバー・ボッシュ法として著名なハーバー氏の来日

 

アンモニアは、肥料の原料、冷媒の他、多数の工業的用途を有しています。最近では、火力発電で石炭燃料の一部を置き換え、CO2排出を削減するエネルギー源としても注目されています。(元来、水素、アンモニアの製造には、かなりのCO2排出を伴っていましたが、様々な改良が施されております。)

 

アンモニアは社会にとって、一世紀以上に渡ってありがたい化合物であり続けている一方、水や大気に排出する際に、処理方法や環境規制も気にしなければならない厄介な存在でもあります。

 

今回のブログでは、排水中の濃度を測定する方法に関して、考えてみたいと思います。

 

アンモニア濃度の測定法

筆者が関わったことがあるアンモニアの濃度測定方法を以下に示します。

他にも方法はありますが、一般的に用いられるのは、以下の方法に示したものと考えております。

水溶液中のアンモニア量の定量方法

方法名

特徴

インドフェノール青

吸光光度法

発色試薬(インドフェノールブルー)を使用

電位差法

(隔膜式電極法)

pH12以上のアルカリ条件で使用

 

イオンクロマトグラフィー

陽イオン分離カラムを使用

水溶液中のアンモニア量の定量方法

インドフェノール青吸光光度法は、古くから用いられている方法ですが、アンモニアの塩素酸化を伴う反応であり、操作は難しいと思います。

電位差法は、専用の電極を用いて簡便に測定する方法です。NH3分子の膜の透過によって電極が応答するのですが、液の粘度なども影響するため、共存成分の組成が複雑となる場合は、測定値がブレるリスクがあります。

となってくると、筆者の経験から、イオンクロマトグラフィーによる測定方法が、取りつきやすく、測定者、分析者による差も生じにくいと考えられます。

イオンクロマトグラフィーによるアンモニウムイオン測定

市販の陽イオン標準液(Li+、Na+、NH4+、K+、Mg2+、Ca2+入り)を測定

各イオンのピークの分離状態も良好で、NH4+イオン濃度0.05mg/L~0.6mg/Lの範囲において、ピーク面積と濃度が直線関係にあり、低濃度であっても、NH4+イオンの量を充分に定量できます。

注意しなければいけない点は、サンプル調製する際の水の純度、新鮮さ、及び試料溶液のpHです。NH3の状態では、イオンクロマトグラフィーで測定できず、NH4+に変換するため、試料溶液を酸性~弱酸性にする必要があります。

また、大気中にNH3が含まれていることから、水溶液を放置し続けると、液中のNH4+濃度が上昇してきます。

しかし、測定に使用する水の水質にさえ、注意しておけば、イオンクロマトグラフィーによる測定は非常に簡便な手法であります。

まとめ

今回は、アンモニア(アンモニウムイオン)の定量、特にイオンクロマトを用いた定量について述べてきました。

 

アンモニアは、生活環境の周りにも関係している物質であるため、その存在や量を確かめる必要が出てくるかもしれません。そのようなときに、このブログの内容を思い出していただけると幸いです。

 

 

前回同様、野球の話題から無理矢理、強引に話題提供をしましたが、この方向で話題を考え続けることは、なかなか難しいと思い始めており、次回のネタについては、現在思案中です。

 

次回は、メインの話題につなげるイントロを変えて、化学、分析を語ってみたいと思います。

 

では、またお会いしましょう!

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