【はじめに】
ヨウ素は、日本で産出できる産業資源の一つであり、その利用方法も多岐に渡っています。I2は、紫色の固体として存在しており、水に溶かした製品として、うがい薬が有名です。
ヨウ素は、他のハロゲン元素と同様、無機塩の形態で入手することも容易で、NaI、KIなどの無機塩を取り扱われた方も多いのではないでしょうか。
NaIの有機合成での利用法は、何といっても、Finkelstein反応が有名です。
㈱合同資源 HPより引用
アセトン中で、塩化(臭化)アルキルにNaIを添加することで、Cl-やBr-がI-で置換され、ヨウ化アルキルが好収率で得られるという反応で、私も昔、利用させていただきました。
また、2017年には、(トリメチルシリル)トリフルオロメタンにNaIを作用させることで、テトラフルオロエチレンを発生させることができると報じられ、フッ素化合物の合成化学に一石を投じることになりました。(フッ素の話については、いずれ機会を設けて語りたいと思います。)
このように、ヨウ素は価値ある材料創出や合成反応で活躍している元素と言えます。
【ヨウ素と分析化学との関わり】
分析化学との関わりとなれば、やはり、酸化-還元滴定が思い浮かびます。
紫色のヨウ素の溶液に、チオ硫酸ナトリウム(Na2SO3)水溶液を滴下し、色を消失させ、ヨウ素の量を測るという手法です。
(還元剤の量を測るために、ヨウ素の溶液を滴下することもあります。)
I-イオンの量を測る方法としては、イオンクロマトグラフィーが良いと考えられますが、改めて考えると、「ヨウ素の分析は、イオンクロマトでやったこと、ないなあ」ということで、イオンクロマトグラフィーでの分析をトライしてみました。
【分析結果】
市販試薬のNaIは純度100%ではありませんが、ひとまず、検量線作成用の試薬として使用しました。
検量線を作成したところ、直線ではなく、2次曲線の形状となっています。この結果を見ると、「悪くないやん」「何とか分析できるんとちゃう」と思っていただける方が多いと思います。しかし。。。
現在弊社で使用しているICの条件では、I-のピークは、SO42-のピークと重なります。SO42-が存在しない試料であれば、分析は可能ですが、SO42-が存在する場合は、カラムを替える、SO42-を沈殿で除去するなどの対応が必要となります。
これからも色々な材料、元素と関わりながら、化学、分析の知識を深めていこうと日々思いつつ、今回はふと、ヨウ素の話題を取り上げてみました。