パワーサイクル試験

エンジンルーム内にパワーモジュールが配置される場合は一般産業用途に比べて 格段に高いレベルの温度サイクル疲労に対する長寿命化が求められます。
その動作寿命の推定には通常、パワーサイクル試験(断続通電試験)が適用されます。
アイテスでは、パワーモジュールに関する主要な評価項目であるパワーサイクル試験の受託サービスを始めました。

パワーサイクル試験とは

パワーサイクル試験には、ΔTjパワーサイクル試験とΔTcパワーサイクル試験の 2種類があります。
パワーモジュール

ΔTj パワーサイクル試験

接合温度を比較的短時間の周期で上昇・下降させます。
主にワイヤ接合部、及び、チップ下はんだ接合部の寿命評価。

ΔTc パワーサイクル試験

ケース温度が、任意の温度に到達した時点で通電を止め、ケース温度が通電前の状態に戻るまでの周期を1サイクルとして繰り返します。
主に、絶縁基板とベース間のはんだ接合部、及び、チップ下はんだ接合部の寿命評価。

パワーサイクル試験受託装置、受託試験条件設定の概要

受託試験で用いられる本装置は、パワー素子に、規定の電力を消費させ、決められた時間内で断続通電を 行い、試料の信頼性を評価する装置です。同時に熱抵抗測定も可能であり、そのデータをHOST PCに取りこみます。(IGBT、IPM、DIODEなどを受託対象としています。)

パワーサイクル試験装置

パワーサイクル試験装置

装置台数:2台 (それぞれパワー素子、最大5個まで同時試験可能)
通電方法:定電流  600A Max. (Vce = 10V)
動作モード:ΔTj 定電力モード(IGBTのみ)
 ΔTj 定電流モード(IGBT, IPM)
 ΔTc 定電流モード
運転モード:連続モードと間欠モード
冷却方式:空冷式と水冷式
熱抵抗測定:可能

パワーサイクル試験 実施例(IGBT ΔTjパワーサイクル試験)

(1)試験開始前にパワー素子の温度係数(Kファクタ)を測定します。Kファクタは、素子内部、半導体のジャンクションの温度特性を表すパラメータです。
 温度係数(Kファクタ)測定
 以上から、KファクタとしてK= 1/2.23 [℃/mV] が得られました。
(2)試験条件を決定します。
 印加電流 Ic = 100A
 Tj max.=175℃ と Tj min. =50℃( ΔTj = Tj max - Tj min = 125℃ )
 昇温時間(ON時間)と冷却時間(OFF時間)を①、②の条件を満たすように設定し、1サイクルの時間を決定します。
尚、Tj はKファクタを用いて、Vceの測定値から求められます。
(3)パワーサイクル試験を実施します。
毎サイクル、ON、OFF時のVceをそれぞれ記録します。
記録したデータから、以下の通り、過渡熱抵抗が計算できます。
過渡熱抵抗 (ジャンクションtoエア(周囲)): Rth(j-a) は
  Rth(j-a)= Δ(Tj - Ta)/P = (ΔTj -ΔTa )/P
= ΔTj/P
= (ΔVce・K)・(1 / (Vce*Ic)) ∵ Ta=周囲温度であり、ΔTa=0
(4)過渡熱抵抗の経時劣化
この例では、4個のパワー素子に対し、15,000サイクル、試験を行いました。過渡熱抵抗の変化を以下のグラフに示します。(試料番号A4では大きな劣化が認められます。)
 

過渡熱抵抗の経時劣化