FT-IRやラマン分光測定は樹脂などの有機化合物の定性分析に適しています。有機物は熱や紫外線、薬品などの影響によって変質することがありますが、その変質によってIRスペクトルやラマンスペクトルがどのように変化するのか、今回は空気中で加熱処理した樹脂のスペクトルを紹介します。
空気中熱処理によるIRスペクトルの変化
汎用樹脂のポリプロピレン(PP)とポリスチレン(PS)のペレットを空気中で加熱処理しました。
PPとPSの熱処理前、および空気中250℃、300℃で1時間熱処理した試料のIRスペクトルを示します。PP、PSともに熱処理後は熱処理前には見られないピークが観察され、このピークは加熱温度が高くなるにつれ大きくなる傾向が見られました。1700 cm–1付近(橙色領域)はC=O基、1200 cm–1付近(水色領域)はC-O結合に由来するピークであり、空気中での加熱処理によって樹脂が酸化劣化したことがわかります。PPの熱処理後のスペクトルは処理前と比べてピークがブロードであり、変質した樹脂のスペクトルにおいてはこのようなピークのブロード化も見られます。
空気中熱処理によるラマンスペクトルの変化
PPとPSの熱処理前、および空気中250℃、300℃で1時間熱処理した試料のラマンスペクトルを示します。PP、PSともに250℃熱処理後のスペクトルは処理前とベースラインに違いが見られるものの、処理前と同様のピークが観察されています。しかし、300℃熱処理後のスペクトルにおいては蛍光による妨害によって定性分析に必要なピークが観察されませんでした。ラマン測定では蛍光の影響で分析が困難になることもありますが、変質の程度によってはFT-IRと同様に定性分析が可能です。
樹脂の種類や変質を生じる環境(例えば加熱時の雰囲気ガスや湿度等の違い)によってもスペクトルの変化の仕方は様々ですが、スペクトル変化の傾向を知ることによって正確な定性分析を行うことが出来ます。変質した試料の分析もぜひご相談ください。





